小石川 武蔵野 赤城 深川 巣鴨 浅草 東京 大塚 西巣鴨 高尾

ゐる。猫貍橋は後掲氷川の杜の「西の方、小石川の流れに架」したもので、「昔、大木の根木の※を以て、

はない。「浮沈」の女主人公さだ子が一とたび嫁ぐ小石川の辰野邸は恐らくや先生生家の光景をそのまゝ借用されたものであらう

かけないところ／″＼に桜欅その他の大樹の聳え立ち武蔵野の日の名残りを示してゐることが頗る私を喜ばせたが、戦後の

一目に残余無く、冬は流を隔てて筑土の時雨、赤城の雪も寝ながら眺め坪の内に異らず、折節は目白台辺時鳥の渡る

があると記述されてゐる。この中の慈眼院は深川から移つて来たもの、他の二つの寺院も都市の繁栄に連れ

巣鴨菊

いまゝたはじめて清福の作家生活結婚生活に入るを得た巣鴨の狭斜街の旧宅趾も亦過去一切を偲ぶ可くもなくなつてしまつ

昭和廿年花季の戦火に巣鴨花街の僑居を焼かれてから早や二年有余の歳月がながれ去つた。

見るかげもなくなつてしまつたことであらう。江戸年間の巣鴨の菊は、『東都歳事記』に拠ると「文化の末」に絶え

はまた、何々園を名乗つた植木職が寡くなく、往昔の巣鴨染井の菊や躑躅のたぐひを育てゝゐた名残りらしく、秋の

ので、居住当時機会ある毎に『江戸名所図会』『巣鴨総覧大正十四年版』のごとき地誌、岩野泡鳴、野上臼川らのこの地に

かく説明されてゐる。さらにその次の頁には「巣鴨真性寺（江戸六地蔵の一員なり）」として、濡れ仏を前に

先づ『江戸名所図会』巣鴨庚申塚の図はひろ／″＼とした雑木の並木で何やら喬木が

大正十四年に上梓された『巣鴨総攬』に拠ると、西巣鴨の慈眼院には浦里時次郎の比翼塚が、同じく

女」の諸篇（明治四十五年）に描かれてゐる巣鴨大塚の町々は至るところ雑木林があり、小川があり、水辺に乳牛の三々

岩野泡鳴の「猫八」（大正中世）及び野上臼川の「巣鴨の女」の諸篇（明治四十五年）に描かれてゐる巣鴨大塚の

その『巣鴨総攬』の口絵写真を一見すると嘗て私の住んでゐた辺りなどつ

作者の態度に頗る義憤した記憶があるから、当時の巣鴨界隈が森林原野に富んでゐたことは、宛ち不思議とするも足り

と巣鴨のことを記してゐる位であるし、考へて見ると私も中学校一

ふるさとは巣鴨に近し菊の花

た。おもへば年少、祖父母の温情に培はれて生育つた浅草花川戸の旧居も、震火ののちは東武電車ガード下に編入されて

ば、却つて一種の快い悲哀感をさそはれて前掲「旧東京と蝙蝠」中に於て嗟嘆したやうな詩文の感興にも駆られ

図会』を披見すると、一見していかにも寥々たる武州大塚村の形相がうかゞはれ、『八犬伝』に名立たる名主蟇六

」の諸篇（明治四十五年）に描かれてゐる巣鴨大塚の町々は至るところ雑木林があり、小川があり、水辺に乳牛の三々伍々

し、考へて見ると私も中学校一年生位のころ、大塚窪町にあつた縁辺のものを訪れると、氷川の杜ちかくは一円の

十四年に上梓された『巣鴨総攬』に拠ると、西巣鴨の慈眼院には浦里時次郎の比翼塚が、同じく妙行寺にはお岩の

馬車」上演に際しては春曇の午前、古川緑波、高尾光子、斎藤豊吉の諸君と共に香華を手向けたことを忘れない。四