江戸 横浜 鎌倉 大阪 本郷 愛宕山 銀座 東京

大工は名を藤吉と申しましたが、やはり江戸の職人という気風がどこまでもついて廻わり、様子がいなせで弁舌が爽やか

酔っていないのです。お俊と別れて自分はしばらく横浜へ稼ぎに行くと言った様子はひどく覚悟をしたらしいので、私も

家を畳んでお俊を私の宅に同居させ、横浜へ出かけてしまいました。

同じ年の夏である。自分は家族を連れて鎌倉に暑さを避け、山に近き一小屋を借りて住んでいた。ある夜

西に落ち、盲人は去った。翌日は彼の姿を鎌倉に見ざりし。

、故障を言えばお前のいう通り、お幸と二人で大阪へでも東京へでも飛び出すばかりだが、お幸はこれを承知だろうか

の方から逃げてしまいました。しかしその妻も私が本郷に下宿しておるうちにそこの娘とできやったのでございます。

です。路地から通りに出ますと、月が傾いてちょうど愛宕山の上にあるのでございます。外はさすがに少しは風があるのでそこ

（とある男が話しだした）自分は何かの用事で銀座を歩いていると、ある四辻の隅に一人の男が尺八を吹いて

男は頭を上げた。思いきや彼はこの春、銀座街頭に見たるその盲人ならんとは。されど盲人なる彼れの盲目ならず

「私はお前をこの春、銀座で見たことがある、どういうものかその時から時々お前のことを思いだす

ばお前のいう通り、お幸と二人で大阪へでも東京へでも飛び出すばかりだが、お幸はこれを承知だろうか』

の間のことは申し上げますまい。国とは音信不通、東京にはもちろん、親族もなければ古い朋友もないので、種々さまざまのこと

叔母の家から持ち出した金はわずか十円でございますから東京へ着きますと間もなく尺八を吹いて人の門に立たなければなら

けれども私は東京に出てから十年の間、いろいろな苦労をしたに似ず、