四谷 東宮御所 大阪 青山 広島 岡山 東京 大塚 神田

を離れて了った。立つ前夜密に例の手提革包を四谷の持主に送り届けた。

東宮御所の横手まで来ると突然「大河君、大河君」と呼ぶ者がある。見れ

大阪に、岡山に、広島に、西へ西へと流れて遂にこの島に漂着

小春日和の日曜とて、青山の通りは人出多く、大空は澄み渡り、風は砂を立てぬほどに吹き

無我夢中で其処らを歩いて何時か青山の原に出たが矢張当もなく歩いている。けれども結局、妻に

大阪に、岡山に、広島に、西へ西へと流れて遂にこの島に漂着したのが去年

大阪に、岡山に、広島に、西へ西へと流れて遂にこの島に漂着した

の酌で飲んでいると、ふと死んだ妻子のこと、東京の母や妹のことを思いだし、又この身の流転を思うて、我

外を歩いた。自分は今もこの時を思いだすと、東京なる都会を悪む心を起さずにはいられないのである。

円及び家財家具を売り払った金を旅費として飄然と東京を離れて了った。立つ前夜密に例の手提革包を四谷の持主に

何時自分が東京を去ったか、何処を指して出たか、何人も知らない、母

妻子の水死後全然失神者となって東京を出てこの方幾度自殺しようと思ったか知れない。衣食のために

「大塚、大塚！」

「大塚、大塚！」

「貴所下りてお出でなさいよ」と母が呼ぶ。大塚軍曹は上を向いて、

この夜自分は学校の用で神田までゆき九時頃帰宅って見ると、妻が助を背負ったまま火鉢の