空知川の岸辺 / 国木田独歩
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(例)札幌
余が札幌に滞在したのは五日間である、僅に五日間ではあるが余
に、北海道を見るに及びて、如何で心躍らざらん、札幌は北海道の東京でありながら、満目の光景は殆ど余を魔し去つたの
札幌を出発して単身空知川の沿岸に向つたのは、九月二十五日の
の官吏は果して沿岸何れの辺に屯して居るか、札幌の知人何人も知らないのである、心細くも余は空知太を指して汽車に
に就いて色々と話し出した、其等の事は余も札幌の諸友から聞いては居たが、彼の語るがまゝに受けて唯
斯く感ずると共に余の胸は大に開けて、札幌を出でてより歌志内に着くまで、雲と共に結ぼれ、雨と共にし
も辛棒が出来さうもなかつたら、貴所方のことだから札幌へ逃げて来れば可いですよ。どうせ冬籠は何処でしても同じことだから
「ハッハッハッヽヽヽ其なら初めから小作人任にして御自分は札幌に居る方が可からう。」と他の属官が言つた。
「さうですとも、さうですとも冬になつて札幌に逃げて行くほどなら寧そ初めから東京に居て開墾した方が可い
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「和歌山県の移民団体が居る処で、道庁の官吏が二人出張して居る、其処へ
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である、僅に五日間ではあるが余は此間に北海道を愛するの情を幾倍したのである。
すら既に我自然に帰依したるの情を動かしたるに、北海道を見るに及びて、如何で心躍らざらん、札幌は北海道の東京でありながら
北海道を見るに及びて、如何で心躍らざらん、札幌は北海道の東京でありながら、満目の光景は殆ど余を魔し去つたのである
あらず、百姓にあらず、商人にあらず、実に北海道にして始めて見るべき種類の者らしい、則ち何れの未開地にも必ず先づ最も
北海道馬の驢馬に等しきが二頭、逞ましき若者が一人、六人の客
たゞ五分の一だけ呉れろ、乃公は其を以て北海道に飛ぶからつて。其処で小僧が九の時でした、親子三人でポイ
を此上もない土地のやうに思つて私が何度も北海道へ来て見ろと手紙ですゝめても出て来得ないんでサ。」
て居たことで、余の蕪雑なる文章も、何時しか北海道の思ひもかけぬ地に其読者を得て居たことであつた。
余は遂に再び北海道の地を踏まないで今日に到つた。たとひ一家の事情は余の
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見るに及びて、如何で心躍らざらん、札幌は北海道の東京でありながら、満目の光景は殆ど余を魔し去つたのである。
沿岸に向つたのは、九月二十五日の朝で、東京ならば猶ほ残暑の候でありながら、余が此時の衣装は冬着
雨を眺めることは決して楽しいものでない。余は端なく東京の父母や弟や親しき友を想ひ起して、今更の如く、今日まで我
冬になつて札幌に逃げて行くほどなら寧そ初めから東京に居て開墾した方が可いんです。何に僕は辛棒します