浅草寺 武蔵野 芝浦 上野公園 巴里 新宿 吉祥寺 荻窪 銀座 東京 浜町 浅草 京橋 東京湾

の輪をせばめて行った。ルンペンどもは狩り立てられるし、浅草寺本堂の天井から床下、五重の塔は申すに及ばず、仁王門の大提燈の中

都会の雑沓から遠く離れた武蔵野の深夜は、冥府のように暗く静まり返っていた。音といっては空

「うちだか、どこだか知らねえ。おれは芝浦で頼まれたんだよ」

「芝浦っていや、ずいぶん遠いじゃないか。歩いて来たのかい」

に腰をおろした。車は乞食の言葉に従って、芝浦の方角に疾走する。

「ウン、それなら間違いない。で、その人は芝浦でおれの行くのを待っているのかい」

そんな話を取りかわすうちに、車は芝浦の闇にさしかかっていた。

明智はなかなか饒舌であった。「その自動車でもって、芝浦へ走ったのだよ。芝浦の水道鉄管置場に、恩田のお父さんが待ち受けて

「その自動車でもって、芝浦へ走ったのだよ。芝浦の水道鉄管置場に、恩田のお父さんが待ち受けていようという寸法なのさ。

。偉いよ。だが、よく生きていられたねえ。芝浦でひどい目にあわなかったかい」

をかけてくるところを見ると、君は遠方だね。芝浦付近だろう」

（そうだよ。芝浦の公衆電話だよ）

であった。叩き起こしたのは明智小五郎である。彼は芝浦の公衆電話を飛び出すと、タクシーを拾って自宅に急ぐ途中、その道筋に当たる

「ウン、麻布から、芝浦、芝浦から浅草とね、なあに、なんでもありゃしない。世間を相手に

「ウン、麻布から、芝浦、芝浦から浅草とね、なあに、なんでもありゃしない。世間を相手に戦うの

糸はその辺から右折して、電車通りを避けながら、上野公園不忍池のそばを通って、ついに浅草公園裏通りに出た。それからまた

その時、レビュー劇場の舞台では「巴里の花売娘」の一場面、夾竹桃の花咲き乱れる花園に、花売

ていたとき、突如、実に突如として、「巴里の花売娘」が、舞台から消えうせてしまったのである。江川蘭子

新宿までは窓外の町並に見覚えがあったが、それから先はほとんど見当が

運転手にここはどこだと尋ねると、なんでも荻窪と吉祥寺の中ほどらしいとの答えであった。

て、運転手にここはどこだと尋ねると、なんでも荻窪と吉祥寺の中ほどらしいとの答えであった。

弘子は三日ほど前、銀座の資生堂まで買い物に行ってくると家を出たまま、それっきり行方不明に

彼女は誘拐されたのにちがいない。だが、銀座のまん中で、女給をさらうというような無茶なまねをする男が、

銀座の夜をそぞろ歩きする過半の人々が、同じ笑いの表情に変って行った

そのものがすでにばかばかしいのだ。あんな煉金術師の部屋が東京の郊外にあることだって、弘子やおれを監禁することだって、みんな

表情の男女によってうずめられた。大げさにいえば、東京じゅうが、同じセルロイドの顔でニコニコと笑い出したのである。

なやつが、ノソノソ町を歩いていたのでは、東京じゅうの人が枕を高くして寝ることができないわけだ。

悪魔のトラックは、なるべく淋しい住宅街をえらんで、深夜の東京を北へ北へと去った。われわれはしばらく姿なき眼となって、

「いや、そうとも限らんよ。東京じゅうでこの公園ほど、犯罪者にとって究竟の隠れ場所はないともいえる

角度をもって雑然紛然と立ち並ぶ大通り、横丁、抜け道……東京じゅうのどこを探したって浅草公園ほどよくできた迷路があるだろうか。しかも

それにしても、いくら都会のジャングルだといって、東京の浅草公園を、熱帯動物の豹がノコノコ歩いていたなんて、あまりに

の魅力である。昼間だけは人足が途絶えなかった。広い東京には、この噂をまったく知らないで、公園に足を向ける人々も少ない

わがＺ曲馬団は愈々数日中に東京市民諸君に訣別致すこととなりましたが、訣別にのぞみ御愛顧御礼と

労働者とが渦を巻いて入れまじっているような、大東京西南の一隅Ｍ町の、ほこりっぽい古道具市で有名な広場に、一か月

東京市民生活の触手が、田園農民生活の中へ突入し、市民と農民と

。それゆえ、虎を連れた猛獣使いが突如として東京に現われたとしても、ただちにそれと疑われる気遣いはなかったのだ

そんな会話のあいだに、車はいつしか、劇場から程近い浜町の、とある意気な門構えの家へ着いていた。

さっそく、浜町の待合が取調べられたことはいうまでもない。しかし、その待合は恩田

すると、果たして、浜町の事件があってから六日目の夜、人間豹は、まったく護衛の

「知っております。浅草の千束町に母親と二人で家を借りているんです」

通りを避けながら、上野公園不忍池のそばを通って、ついに浅草公園裏通りに出た。それからまたグルッと一と廻りして、二天門

「浅草公園とは思いがけなかったね。まさかやっこさん公園に巣喰ってるんじゃあるまい

ないよ。警察としてはできるだけの動員をして、浅草公園そのものを囲んでしまうんだね。そんなことをしても、この

あるんだからね。だが、君のお蔭で犯人が浅草公園へはいったことがわかっただけでも、大した収穫だ」

姿であったに違いない。かたわ乞食に化けて、浅草の雑沓に隠れていようとは、なんというズバ抜けた思いつきであろう。

て引き上げるほかはなかった。恒川氏は警視庁に帰って浅草公園包囲の手配を講ずるために急いでいた。人々は自動車の方へ

「ウン、麻布から、芝浦、芝浦から浅草とね、なあに、なんでもありゃしない。世間を相手に戦うのが

立ち並ぶ大通り、横丁、抜け道……東京じゅうのどこを探したって浅草公園ほどよくできた迷路があるだろうか。しかも、そこには年がら年中、

の輪をせばめて行った。ルンペンどもは狩り立てられるし、浅草寺本堂の天井から床下、五重の塔は申すに及ばず、仁王門の大提燈

目には、恒川警部の発案になる、奇妙なポスターが浅草界隈の辻々に、ベタベタと貼り出された。ポスターのまん中には画家に描か

ようにまったく人影を見ないというさびれ方で、今や浅草公園は、遊覧客の代りに、私服刑事と、青年団員と、物好きな

やっぱりあいつは、浅草公園のどこかの隅に身を潜めていたのだ。もしかし

理髪店の主人が、愛犬の土佐犬を連れて、人気のない浅草公園へ運動にやってきた。

ふだんなれば、映画館がハネてしばらくすると、浅草界隈の犬持ちどもが、朱や紫の房のついた紐を、自慢

だ。ルンペンどもも命は惜しいのである。これがあの浅草公園だろうか。戸惑いをして飛んでもないところへ来たんじゃない

しても、いくら都会のジャングルだといって、東京の浅草公園を、熱帯動物の豹がノコノコ歩いていたなんて、あまりに突拍子も

正真正銘の猛獣に違いなかったことが判明した。その朝浅草名物「花やしき」の支配人が青くなって警察署に出頭した。そして、同園

本物の猛獣までが野放しになっているとわかっては、浅草人種の恐慌は察するにあまりがあった。映画も、レビューも、飲食店も

しかし、さすがは浅草公園の魅力である。昼間だけは人足が途絶えなかった。広い東京には

先にもしるした通り、その空き家は浅草公園に接してはいるものの、不思議と淋しい場所にあった。うしろは煉瓦

。世界的団長自ら広告幟を担いで、ビラを配って、浅草界隈を歩いているなんて、なんとまあインチキな、人を喰ったしわざで

そうだ。神谷君、こいつは、きのうチンドン屋に化けて浅草の映画館の横で僕たちを待ち受けていたのですよ。そして、こいつ

ていた。神谷青年もあとにつづく。表に出ると浅草公園へと急いで、そこの入口にある公衆電話へ、呼び出した先は

明智小五郎と神谷青年とが、浅草公園横の大通りで、タクシーを呼び止めたのが、ちょうどその時分であった

、寵愛の豹を失った彼が、一年の後、浅草の動物園から、又しても同じ動物を盗み出さなければならなかった理由は

では、あの浅草の動物園から盗み出した豹は、いったいどうなったのか。読者諸君は、

人の魅力が忘れがたくて、つい足しげくその家へ、京橋に近いとある裏通りの、アフロディテというカフェへ通よいつづけたのも、

僕は若い方の恩田さんに会いたいのです。いつか京橋のカフェでお眼にかかった神谷というものです」

のものが、風のまにまに白い雲のあいだを縫って、東京湾の方角へ流れ流れて行くのを見るばかりであった。