大阪 箱根 三重県 上野公園 浅草 東京

「箱根からこっちは、本当に始めてなんです。大阪で教育を受けて、これまであちらで働いていたものですから」

「大阪ですか、大阪なら行ったことがある。でも、もう十年も前に

「大阪ですか、大阪なら行ったことがある。でも、もう十年も前になるけれど」

「それじゃ大阪でもありませんよ。私は七年前まで、つまり中学を出るまで国

「箱根からこっちは、本当に始めてなんです。大阪で教育を受けて、これ

「三重県です。最近始めてこちらへ出て来まして、今勤め口を探している様

「そう、私もそんな気がする。三重県と。私は一体旅行嫌いで、若い時分から東京を放れたことは殆どない

時分から東京を放れたことは殆どないのですが、殊に三重県なんて上方だということを知っている位で、はっきり地理も弁えない始末です

のお園が、際立っていとわしくなり、すみ子が睡っている三重県の田舎町が、そこへ一度も行ったことがない丈に、不思議にもなつかしく

ですから、ある日、ふと思いついて、彼の泊っている上野公園裏の下宿屋を訪問したのです。もう夕方で、彼は丁度外出から

と狭い家に差し向いじゃやりきれませんや。私はよく浅草公園へ出掛けて、所在のない時間をつぶしたものです。

挙動に注意しながら、じっとしていました。あの騒がしい浅草公園の真中にいて、色々な物音は確に聞えているのですが

私達はそうして、浅草公園の真中で名乗り合いをした訳ですが、妙なことに、私の

、実に不思議な因縁と云わねばなりません。偶然浅草公園の共同ベンチで出逢った男が、昔の恋人の兄弟であって、

「私は東京の者なんだが、で、御上京なすったのはいつ頃なんです

始末ですから、お国で逢った筈はなし、あなたも東京は始めてだと云いましたね」

する。三重県と。私は一体旅行嫌いで、若い時分から東京を放れたことは殆どないのですが、殊に三重県なんて上方だということ

の姉のすみ子は、ある事情の為に小さい時分から、東京の北川家に養女になっていて、そこから××女学校にも通わ