大阪市 大阪府 パリ 名古屋 香川 大阪 横浜 通天閣 神戸 京都 東京 京橋 東京湾

差出人の名はしるされていなかったし、消印も或いは大阪市内、或いは京都、或いは東京と、その都度ちがっていた。

に帰って間もないある夜のことであったが、同じ大阪市内の盛り場Ｓ町の通りを、両側のショウ・ウインドウを眺めながら、用も

「『黒トカゲ』じゃ。大阪市内の消印がある」岩瀬氏はさすがに商人らしい眼早さで、それを

どんよりと曇った冬の日、夕暮れの薄闇、大阪市を南北につらぬくＳという幹線道路を、烈しいタクシーの流れにまじって、絶え

によって、全国に知れわたった。土地の警察はもちろん、大阪府の全警察力をあげて早苗さんの行方捜索が行なわれた。デパートの陳列

靴と下駄とのかなでる交響楽、蹴立てる砂ぼこり。そのまん中に、パリのエッフェル塔を模した通天閣の鉄骨が、大大阪を見おろして、雲にそびえ

時二十分の下り列車に乗りこむていにして、前もって名古屋までの切符を買わせておいて、トランクと一しょにホテルを出発して、

ポーターに見送らせて汽車に乗るのよ。つまり、あんたは名古屋へ行ったものと思いこませて、その実、次のＳ駅で途中下車して

「山川氏が名古屋までの切符を買いながら、どうして途中下車したか。そして、同じ市内

香川というのは、檻に入れられていた美青年の名だ。

のはね、お父さんに連れられた、それはそれは美しい大阪のいとはんなの」

ダイヤモンドを頂戴しようってわけなの。お父さんていうのは、大阪の大きな宝石商なのよ」

「ええ、大阪でちゃんと予告してあるのよ。ああ、なんだか胸がドキドキするようだ

翌日、岩瀬氏父子は、予定を変更して、大いそぎで大阪の自宅に帰った。途中が非常に不安だったけれど、ホテル住まいをつづけるより

にあたった。ホテルから駅までの自動車、汽車の中、大阪に到着して出迎えの自動車、賊の手はどこに伸びてくるかわからなかっ

それは早苗さんが大阪に帰って間もないある夜のことであったが、同じ大阪市内の盛り場Ｓ

いない。友だちを訪問しようともしない。ただブラブラと大阪の町じゅうを歩き廻っていた。一体これからどうするつもりなんだね」

大阪の南の郊外、南海電車沿線Ｈ町に、大宝石商岩瀬庄兵衛氏の邸宅が

うばい取って見せると揚言しているのだ。いずれはもうこの大阪へ潜入しているにちがいない。ひょっとしたら、Ｈ町の岩瀬邸の間

小間使いがドアから顔を出して、電話を知らせた。大阪の店からの用件らしい。岩瀬氏は奥の居間の卓上電話へといそいで

電話の結果、岩瀬氏は急に大阪の店へ出向かなければならなくなった。彼は大急ぎで着がえをして、

「いや、ご主人はさっき、店から電話がかかって、大阪へ出かけられましたよ」

酔っぱらい騒ぎがあってから二時間ほど後、急報に接して大阪から帰った岩瀬氏と明智小五郎とが、主人の居間で、この不可解な出来事

地域の広さ、日々呑吐する群衆のおびただしさでは、大阪随一の大遊楽境であった。立ち並ぶ劇場、映画館、飲食店、織るがごとき雑沓

エレベーターの上昇とともに、大阪の街がグングン下の方へ沈んで行く。冬の太陽はもう地平線に近く

うしろへと飛び去る街燈の中を、二台の車は、大阪の町から町をグルグルと曲がりながら、不思議なレースをつづけた。

車がとある町角を曲がると、そこに大阪名物の運河の一つが流れていた。片側は大戸をおろした問屋町、

その翌未明、大阪の川口を出帆した二百トンにも足らぬ小汽船があった。しあわせと

形容のできない恐怖であった。それはきのうの日付の大阪の大新聞であったが、記事中に「昨七日」とあるのは

すると、早苗さんをどっかへ隠したのも、あの大阪の新聞を椅子の上へのせておいたのも、あんたの仕業だったの

を受けている。あの娘にも苦労をかけた。今度大阪へ帰ったら、岩瀬さんから充分謝礼をしてもらうつもりだよ」

けれど、あんた、逃げおおせると思っているの。だめよ。横浜か神戸の波止場でマゴマゴしているうちに、捕まってしまうのが落ちだわ

展望台。（支払方法）岩瀬庄兵衛氏単身にて右時間までに通天閣上に現品を持参すること。

冬の風が、ヒューヒューと烈しく頬を打った。冬の通天閣は不人気だ。それに夕方のせいもあって、展望台には一人の遊覧

あんた、逃げおおせると思っているの。だめよ。横浜か神戸の波止場でマゴマゴしているうちに、捕まってしまうのが落ちだわ。

しるされていなかったし、消印も或いは大阪市内、或いは京都、或いは東京と、その都度ちがっていた。

「じゃあ、この東京にかくれていろっていうんですか」

、Ｓ駅から、またトランクといっしょに自動車に乗って、東京に引きかえし、こんどはＭホテルへ乗りつけるの。そこで一ばん上等の部屋をえらん

いなかったし、消印も或いは大阪市内、或いは京都、或いは東京と、その都度ちがっていた。

東京のＫホテルでは、名探偵明智小五郎にさまたげられて、女賊の誘拐の企て

お気に入りの婆や、そのもう一つ手前の部屋には、東京から出張してきた明智小五郎が寝泊りをして、玄関わきには三

「ホホホホホ、岩瀬さん、お見忘れでございますか。わたくし東京のホテルでご懇意願いました緑川でございますわ」

みたいな男だが……ああ、わかった、あいつだ。東京のＫホテルで、山川博士に化けて早苗さんを誘拐した、拳闘不良

は今、遠州灘を東京に向かって走っているのよ。東京にはね、或る秘密の場所に、あたしの私設美術館がありますの。

の行く先、教えて上げましょうか。あたしたちは今、遠州灘を東京に向かって走っているのよ。東京にはね、或る秘密の場所に

雨宮潤一が、約束の京橋の袂に立ちつくして、黒衣婦人を待ちかねているところへ、一台の

その翌日の夕ぐれ、汽船は東京湾にはいって、Ｔという埋立地の海岸近くに錨をおろした。闇