青山 本郷 東京市 両国 上野公園 青山墓地 巴里 深川 東京 麹町 上野 お茶の水 渋谷 代々木 浅草 浜町 品川 月島 池袋 目黒 両国橋 隅田川 永代橋

不思議は、青山の怪屋で、唇のない男が、三たび消失せたことばかりでは

「ではお差支えなければ、これから直ぐ青山へ御出かけ下さいませんでしょうか」

青山の例の怪屋への途中、絶えずうしろの窓を注意していた

彼は、さっき青山で怪屋の探検を済ませた時と同じ様な、一種異様の困惑の

「僕が三谷君と一緒に、青山の空家を調べたことは、御存じでしょう。例の倭文子さんが幽閉され

読者は、この物語りの初めに、倭文子が青山の怪屋にとじこめられたことを記憶されるであろう。そこの地下室で、

。一番最初、茂少年をおとりにして、あの人を青山の空家へとじこめた時、何の面倒もなく殺害することが出来た筈です

はポケットから布にくるんだ石膏の歯型をとり出して「青山の空家に残っていた真犯人の歯型だ。この二つが完全に一致し

よ。恒川さんたちが、唇のない男を追いつめて、青山の怪屋附近の露路で、見失ってしまった。怪人物は突然煙の様

ある日恒川警部が、本郷のＳ病院に入院中の明智小五郎を見舞った。

に直径二尺程の丸い鉄の蓋がある。近頃、東京市中に目立ってふえた、下水道のマンホールだ。

文代の自動車が止まったのは、丁度菊人形開演中の、両国国技館の前であった。

自動車に乗った。そして、その行先が、思いもよらぬ、両国の国技館であることを知った時にも、さしてあやしみはしなかった。日頃突

、気早やの連中は、風船見物の目的で、汽車に乗って、両国駅へ押しよせる程の騒ぎになった。

が、それは少し後のお話、場面はまた、両国の空へ戻る。

を、一応警察署に同行して、なおきびしく取調べたが、上野公園で聞き取った以上のことは何も分らなかった。

なら、畑柳家の知合の人ですよ、ホラ、先だって、上野公園の事件のとき、畑柳夫人に化けて、子供を取り戻しに行った、

神宮外苑から、青山墓地を通り抜けて、暫く走ると、大邸宅の高い塀ばかり続く、非常に淋しい

寺院、近くはルルウの髑髏怪人が身を潜めていた巴里のオペラ座などに比べても、決して劣らぬ秘密境である。

脱獄以来二ヶ月の間、彼は深川のある同類の家に身を隠していました。――その同類の

彼は、その深川の同類の家に、二ヶ月程潜伏していましたが、最近に

岡田はどこにいるかと聞くと、一寸東京へといって、荷物などはそのまま残し、急いで出発したという

、死後十日以上というのだから、恐らく、彼が東京へ行くといって宿を出たその日に、身投げをしたのが

と柳倭文子とは、このいまわしい土地をあとにして、東京へと汽車に乗った。

、以上は物語の謂わばプロローグである。これから舞台は東京に移る。そして世にも奇怪なる犯罪事件の幕が、愈々開かれること

三谷と倭文子は、東京へ帰ってからも、三日に一度は、場所を打合わせて置いて、

に直径二尺程の丸い鉄の蓋がある。近頃、東京市中に目立ってふえた、下水道のマンホールだ。

ばかりの人は、存外これが目につく相です。併し東京人の我々は、慣れてしまって、道に落ちている石塊程にも

隠されていそうな、あの不思議な魅力を、現代の東京に求めるならば、恐らくこの国技館の菊人形であろう。

騒ぎずきの東京市民は、ほとんど熱狂して、怪賊の思い切った曲芸を喝采した。

その日第一回のラジオ・ニュースで、このことが、東京は勿論、全国に伝えられた。

た。あまりにも荒唐無稽な、怪奇小説が、現在、この東京に実演せられているという、激情的な事実が、彼等を有頂天

「検べました。東京には、蝋細工の専門工場は四五軒しかありませんが、それを残ら

「イヤ、それは僕も知っています。この節、東京附近で死骸を土葬にする例は、非常に珍らしいのですから、探し出すの

そこで二人は、門前に待たせて置いた自動車を、東京の畑柳家へと走らせた。そして、例の鉄扉いかめしい門前に降り立った

伏た倭文子を、慰めている所へ、やがて、所管の麹町警察から、司法主任の警部補が、一名の私服を伴って、訪ねて

三十分程して、麹町警察と警視庁とから係官が出張して来た。

最初に踏込んだ、麹町署の司法主任が、けげんらしく呟いて、老人を振返った。

氏と二人の警官とが、怪物のあとを追った。麹町の司法主任丈けは、なお取調を行う為に、邸内に残った。

それを聞くと、追手に加わっていた、麹町署の巡査が、びっくりして声をかけた。

ばならぬ筈なのに、あのときあとに残った、麹町の司法主任が、屋内屋外、一寸角も余さず、検べ廻ったに

上野、北川病院にて、三谷。

彼は倭文子の同意を得て、お茶の水の「開化アパート」を訪ねた。そこに有名な素人探偵、明智小五郎が

「温泉で名刺を貰っていました。何でも渋谷辺の、ずっと郊外の様に記憶しています」

タクシーが止まったのは、代々木練兵場の西の、まだ武蔵野の俤を残した、淋しい郊外であった

「例の代々木のアトリエにあった三人の女の死体ですね。あれの身元は分り

それはさておき、その翌日、今度は代々木の怪アトリエから程遠からぬ、Ｏ村の西妙寺というお寺の墓地

また、代々木のアトリエで、ガラス窓を砕いた石つぶても、やっぱり、君が先ず脅迫状を

、ジオラマ館、メーズ、さては数年前滅亡した、浅草の十二階などと同じ、追想的な懐かしさ、いかもので、ゴタゴタし

その時、彼等の自動車はまだ浜町辺にさしかかったばかりであったが、国技館の丸屋根はどんな遠方からでも

またたく内に、浜町公園を中心として、附近一帯に人の山だ。ツェッペリンが飛来し

迫った時には、既に永代橋を南に越えて、品川湾へと流れていた。

て、お台場の方角へ、ランチは、相生橋をくぐって品川湾へ。

品川湾の活劇があった翌々日、恒川警部が、明智小五郎の病室を見舞った

「そうです。しかし、それが岡田道彦の歯型とも、品川湾で溺れた小説家の歯型とも一致しないとすれば、奴等はまだ

警部は品川湾で、一度そいつに出会したことがある。あの時のは、ろう製

番目の「唇のない男」であった。最初は、品川湾で焼け死んだ園田黒虹のかぶっていたろう製のお面、第二

「すると、僕が品川湾ではぎ取った、園田黒虹のかぶっていた、あの仮面が、即ち

品川湾の風船男の場合も同じことだ。文代さんに聞くと、あの風船

風船は月島を横切って、お台場の方角へ、ランチは、相生橋をくぐって品川湾

ランチは、月島を離れて、大海に乗り出した。見ると、賊の気球は、五六丁

「それは、池袋の非常に淋しい場所にある、一軒建ての小住宅なんですが、

「目黒の工場街にある、一軒の小さな工場です。三谷が、果してそこへ

「お聞きの通りです。やっぱり目黒の工場街へ帰った相です。すぐお伴しましょう」

は疾風の様にちまたに拡がり、続々とかけつける見物人で、両国橋の東西は時ならぬ川開きの人山だ。

一方某新聞社の飛行機は、隅田川両岸の群集、附近一帯の屋根に群がる市民の歓呼をあびて、国技館の

、再び雲を破って下界に姿を現わしたのは、隅田川の下流、清洲橋の空であった。

いた警官隊は、水上署のランチに同乗して、隅田川を風と共に走った。

隅田川の川口を離れる頃には、追手の船は、警察ランチ一艘では

が、地上二十メートルの間近に迫った時には、既に永代橋を南に越えて、品川湾へと流れていた。