北国の春 / 中谷宇吉郎
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シカゴの郊外、このウィネツカの町にも、ようやく春がきて、毎朝目をさます
を、アメリカへきて初めて知った。というのは、シカゴの水族館には、三尺近い鰊が悠々と泳いでいるのである。
シカゴのように、一番近い海から、六百マイル以上もはなれている、大陸の真中
ある話で、別に特記すべきことでもない。しかしシカゴの郊外、ウィルメットの研究所の工場で、バチラーさんの話に花が咲いた
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前の戦争中、ニセコの山頂で、雪中飛行に関係のある研究をしていたので、ニセコ
敗戦前の日本にも、実はあったのである。ニセコの山で研究をしていた頃、働きに来ていた出面の人
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ワシントンの新木さんから、ポートマスの桜が四、五日早いらしい、皆で花見に
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ウィネツカは札幌と大体緯度が同じくらいで、風物にも似たところがある。とくに春は
、やはり少し草臥れたのかもしれない。二十年間住んだ札幌のことなどが、時々思い出される。アメリカから北海道へというような気持で、
いう風景は、日本内地では、ちょっと見かけられないが、札幌では、何も珍しいことではない。札幌の北大の構内は、エルムの
ないが、札幌では、何も珍しいことではない。札幌の北大の構内は、エルムの学園などといわれて、戦前のまだ豊かで
どうかというたよりがあった。何だか、残雪の札幌にいて、新聞で東京の花のたよりを読んでいるような気がし
いるが、非常に面白いという話なのである。まさか札幌のバチラーさんとは思わなかったので、初めはいい加減に聞き流していたが
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年間住んだ札幌のことなどが、時々思い出される。アメリカから北海道へというような気持で、北国の春を、思いつくままに綴ってみた
一杯に張っている姿を、窓越しに眺めていると、北海道のおそい春が思い出される。
北海道の山うど
Y家へは、始終立寄っていたが、そこでいろいろ北海道独特のものを御馳走になった。そのうちで、一番印象に残っているもの
北海道の山うどは、少しかおりが強すぎるくらいで、香気の方では全く申し分が
くれた山うどは、東京の一流の料理店で出すうどに、北海道の山の香気だけを添加したような趣きがあり、味もかおりも、
こういう山うどは、北海道に二十年も住んでいて、その時まで食べたことがなかった。それ
北海道はもう鰊も大分終りに近づいた頃であろう。北海道の食物の中で、
北海道はもう鰊も大分終りに近づいた頃であろう。北海道の食物の中で、一番美味しいものといえば、けっきょく鰊に落ち着くのでは
の味は、とくに鮮度によって、ひどくちがうので、北海道の鰊は、けっきょく北海道でなければ味わえないのである。
によって、ひどくちがうので、北海道の鰊は、けっきょく北海道でなければ味わえないのである。
いうことは、私も初めて知ったが、鰊の本場の北海道の方の中にも、御存じない方が多いだろうと思って、ちょっとお知らせする
道は何かといえば、開発が一番おくれている、北海道と東北とに望みをかけるのが、一番自然な考え方である。ところがたとえば
をかけるのが、一番自然な考え方である。ところがたとえば北海道の開発にしても、一つ盲点が残されているが、それは輸送
との連絡をよくしなければ、どうにもならない。北海道の山奥で、熊笹を切って荒地を拓くことだけを開発だと思ったら、
東北線一本で、四国九州を併せただけの面積の北海道をぶら下げていて、それをあまり不思議に思わないのだから、まことに可笑しな
不思議に思わないのだから、まことに可笑しな話である。北海道の開発、即ち今日の日本の開発は、まず輸送問題を解決し、ついで住宅
の複線化にしても、こういう風に考えると、皆北海道の問題である。このように世界も日本も、それぞれひどく狭くなったところに
は、全然関係のない生活をしている人たち、例えば北海道奥地の貧農などは、エスキモー人と、そう変らない生活水準に落ち込むおそれが、
北海道の位置
現在の日本における北海道の位置というものを、少し離れたところから考えてみるのも、ちょっと変っ
の増産ということになるであろう。これらは、皆北海道の問題である。それで北海道開発の問題は、今後の日本の国是を左右する
の日本の国是を左右するともいえよう。日本における北海道の位置は、こういう風に考えると、非常に大切なものになる。(
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て、現在では、アラスカと加奈陀の北部、それにグリーンランドとに、わずかに残っている。一部は大分現代化して、ゴム長などはい
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いわれて、戦前のまだ豊かであった日本では、東京などの若い人たちの間に、大いに人気があった。あの北大のエルム
た。何だか、残雪の札幌にいて、新聞で東京の花のたよりを読んでいるような気がした。
Yのおばさんのところで時々出してくれた山うどは、東京の一流の料理店で出すうどに、北海道の山の香気だけを添加した
東京などでは、鰊といえば、およそ不味いものの代表のようになって
東京大阪間に、弾丸道路をつくる案が、いよいよ実現されそうである。
アメリカの道路のことを思えば、東京大阪間に、こういう弾丸道路が一つくらいあるのは当り前のことで
である。何といっても、最大の消費地である東京との連絡をよくしなければ、どうにもならない。北海道の山奥で