琵琶湖の水 / 中谷宇吉郎
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である。砂は海岸か河原にしかないものである。東京市中にないものをあらしめるには、運んで来るより外に方法は絶対に
を全市に配布することが絶対必要である。砂は東京市中に無いのだから仕方がない。セキ車などそうあるわけはないから、
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何であれ、とにかく困るのは、都市の住民である。札幌市でも、到頭我慢が出来なくなって、円山の天然記念物になっている原始林を
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の騒ぎではなく、燃料問題に狂奔の形である。北海道では食糧よりも燃料の方がもっと重大問題なのだから、無理もない
北海道でも、乱伐の結果、この頃では原始林などというものは、そう簡単
一冬に五敷や六敷使うのが普通であった。北海道の田舎では、現在でも大抵の農家は、十敷以上、多い家で
住宅の欠陥については、充分考える必要があるが、北海道にはまだ薪はかなり豊富にあることは事実である。少なくも豊富に焚い
そういう気持になったのは、最近北海道の開発について、綜合か分割かという議論が盛んにあって、その
ところでこの分割というのが、北海道では大変評判が悪い。開発庁が閣議に上った頃、即ちこの一月
が閣議に上った頃、即ちこの一月十日前後の北海道の新聞には、分割絶対反対の声が盛んであった。「綜合して
無視して、中央で飽くまで分割政策をとる場合には、北海道は独立して自由国となるべしとの論も出ている」というような
との論も出ている」というような文句が、北海道の二つの大新聞に、堂々と出ていた。「独立して自由国
なのである。そして敗戦後の日本の再建には、北海道の開発が残された少数のホープのうちで、筆頭に挙げらるべき問題で
記』の著者吉田氏の書かれたものによると、北海道の農耕地が一番広かったのは、昭和十二年であって、水田と畑
。それが戦争中労力不足等の原因でだんだん減って、北海道庁の農業生産計画に現われた耕地面積の統計では、昭和二十年度には
北海道の百姓にも手のつかぬ熊笹の荒地を、東京の人間に素手で開墾
ある。円山の原始林の話ならば、苦笑ですまし得る。北海道の開発は国家的の問題としても、まだ眉をひそめるくらいで我慢出来る
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札幌でも昨年から燃料問題が深刻になってきた。当局からは夏の初め頃
た話では、北見方面から千石送った薪が、札幌へは八十石しか着かなかったそうである。そういういろいろな輸送の困難が
この話の落ちはそこにあるので、五本の薪が札幌の冬を越すのに、如何なる役割をするか、それは説明するまでもない
数量的な資料があるわけではないが、統制前の札幌では、薪を主として使っていた家では、一冬に
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た。その中で比較的罪のない例をあげてみよう。東京で防火用の砂を用意せよという布告が出たことがある。防衛
である。砂は海岸か河原にしかないものである。東京市中にないものをあらしめるには、運んで来るより外に方法は
少なくとも五〇キロはある。一戸に五〇キロの砂を東京全市の家に備えつけさせるためには、方法の如何をとわず、
しかし東京の当時の人口は、七百五十万あって、家数にして二百五十万戸になる。
を全市に配布することが絶対必要である。砂は東京市中に無いのだから仕方がない。セキ車などそうあるわけはない
1.25×105トン、即ち十二万トンの砂を海岸から東京市まで運び、それを全市に配布することが絶対必要である。砂
して追い返してやる」と威張っている百姓たちからは、東京の闇値くらいは充分しぼられる。「皆三千円から五千円くらいの金は
北海道の百姓にも手のつかぬ熊笹の荒地を、東京の人間に素手で開墾させようというのは無理である。生爪を全部