東京

のことである。封建時代の殿様の生活から、現今の東京における華族の生活に移る間に、田舎の旧藩下で、御殿の

結った細面の随分綺麗な方であった。大殿様が東京の御本邸へ行かれて留守の間などは、Ｍの祖母が話相手

そのような時でも、御馳走は今の東京の普通の生活に較べると、随分質素なものだった。御殿の生活で

大殿様が東京から御帰りになった時などは、よく組合せ文房具と洋菓子とを戴いた

能では当時有名な方だったそうである。半分は東京の御本邸で過されたのであるが、御帰りになるとよく能

時代の末頃になると、殿様も御前様もほとんど大部分を東京で過されるようになった。大殿様は、晩年には始終眼を患っ

私が六年になった時、東京における御殿の生活に、色々よくない事件が引つづいて起って、