日本のこころ / 中谷宇吉郎
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て国立公園に走る。国立公園といっても、大きいものは、四国くらいの広さである。その地域は、なるべく人工を加えないで、原始の
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の普通の家庭に、いわゆる素人下宿をしていた。神楽坂の近所であったが、いい親切な家があって、ディーケは大いに満足し
夏になると、よく浴衣がけで素足に下駄をひっかけて、神楽坂の夜店を素見していたものである。後になって、オランダで述懐し
或る夕方、例によって、浴衣がけで神楽坂をぶらぶら散歩していたら、後から汚い仕事着の労働者がやって来た。
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があった。それはエリセーフ氏が、東大の学生時代に、北海道へ旅行した時の話である。
夏休みに、一人でぶらりと北海道へ遊びに行ったのだそうである。紺絣の筒っぽに下駄をひっかけて
北海道の景色は広々としているといっても、シベリアを知っているエリセーフ氏
よりも『三四郎』の方が、面白かった。ごとごととのろい北海道の三等車の中で、紺絣のエリセーフ君は、夢中になって、『
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昨年の夏、ボストンで、二十年ぶりに、このエリセーフ氏に会った。二晩ばかり、おそくまで
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していたそうである。私も二十年前に、巴里でエリセーフ氏に大分厄介になったことがある。二、三回目に
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であるが、若い時に日本へ来て、主な教育は東京で受けた人である。それも東大の文学部に入り、国文学を専攻、
は、まだその概念もなかった頃の東京である。その東京の街路の雑沓、「大吉」だの、両替だの、薬玉だのの
整理などというものは、まだその概念もなかった頃の東京である。その東京の街路の雑沓、「大吉」だの、両替だの