ジストマ退治の話 / 中谷宇吉郎
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七年くらい寿命があるそうであるが、私は郷里の加賀へ帰ると、鮒の刺身が好きで、よく食ったものである。加賀地方
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もかにも放り出す気で、さっさと家をたたんで、伊豆の伊東へ引き揚げてしまった。その頃は、物理学さえあまり信用していなかったくらい
伊東へ来てから、初めのうちは、大変調子がよかった。
それでも案外よく持って、その冬も無事に越し、伊東で第二回目の夏を迎えた。伊東の暑さには、前年の
に越し、伊東で第二回目の夏を迎えた。伊東の暑さには、前年の夏でこりたので、その夏は涼しい札幌
向の本だからと、自ら慰めておいて、後で伊東で懇意にしていたお医者さんのところへ行って、寄生虫の部厚い専門
一寸こわかった。それで最初の一本は、武見さんに伊東まで来てもらって、自分の家でやってもらうことにした。
到頭最後の一本は、武見さんに伊東まで来てもらって、悲壮な決心でやってもらった。細君はのんき者だ
もっともこれだけでは不充分である。伊東の海魚は時に川にもはいって来るので、ひょっとするとジストマをもっ
以上の結果から、金沢の鮒でもなく、伊東の刺身でもない確率が大きく、銀座の某店の鮒である確率が非常
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、何もかにも放り出す気で、さっさと家をたたんで、伊豆の伊東へ引き揚げてしまった。その頃は、物理学さえあまり信用していなかっ
伊豆の温泉と、南国の太陽と、それに鮮らしい小魚とが、私の身体
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は、前年の夏でこりたので、その夏は涼しい札幌で越すことにきめて、北大病院へ、今から思えば贅沢な入院をする
が出来上がったわけである。その後二、三カ月して札幌へ帰って、遠心分離器で便の集卵をやってもらったが、やはり完全に
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、鮒の刺身が好きで、よく食ったものである。加賀地方にはジストマはいないということになっているが、それも怪しいもので
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た。しかしその年の夏には、英国の日食班が北海道へ来たので、その案内役をつとめたり、秋の大演習に、天皇陛下を
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で巧い人を思いついたのであるが、妻の兄で金沢に住んでいて、釣が好きで鮒の刺身を常食のようにし
以上の結果から、金沢の鮒でもなく、伊東の刺身でもない確率が大きく、銀座の某
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ある。その証拠には、心霊療法のようなものが、東京の真ん中で、立派に大邸宅をかまえて繁昌していた。医者が
馴れてしまっているので、案外平気で、時には東京へも出て行くくらいであった。しかし余所目には、だんだん衰弱して
、飛行便で慶応病院あてに送ってみた。当時は東京―札幌間に定期航空路のあった時代である。
手紙には、さすがにそうは書いてなかったが、とにかく東京へ来いと、熱心にすすめてあった。
、小泉さんも少々面喰って、これは大変だ、とにかく東京へ呼んでくれ、しかし自信をもって引受けるわけには行かないと、大いに
それですぐ飛び出して、東京へ出て来た。そして岩波さんと小林君とにつれられて、慶応
馬鹿にしないことにきめた。三週間に一遍くらい東京へ出て来て、武見さんに診てもらうごとに、「あなたはなかなか
。これなら大丈夫だというので、二本目からは東京へ出かけ、丁度文理大の藤岡君のお母さんが、慶応に入院してい
混乱時に、毎月のように、超満員の東北線で東京通いもしたが、それも何事もなかった。けっきょく憎らしいくらい丈夫になっ
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さんは凱歌をあげて、私と小林君をひきつれて、銀座へタクシーをとばせた。
「そうか、そりぁ万歳だ。中谷さん、銀座へ肉を食いに行こう」と岩波さんは凱歌をあげて、私と小林
よくわからないから仕方ないとして、肝臓ジストマの方は、銀座の某店で鮒の刺身を食ったからである。だからああいう危い
銀座の某店に罪を帰したのは、次のような調査にもとづいた
鮒でもなく、伊東の刺身でもない確率が大きく、銀座の某店の鮒である確率が非常に大きいという結論に達したわけ