神楽坂 九州 札幌 小樽 東京 日比谷

来た。それはもう九時過ぎだつたけれども私は神楽坂の或る飲食店へと出かけて行つた。

私達もそれに続いてその家を出た。神楽坂の往来はびしよ／＼にぬかるんで夜風が寒かつた。而して人通りが途絶え

それは急におんつぁんが九州に旅立ち、その旅先きから又世界のどのはづれに行くかも知れないやう

予期してゐたやうなことは全く齟齬して、結局九州まで有り金の凡てを費ひ果たしに行つたやうな結果になつた。

金が溜るとそれを持つて、おんつぁんに会ひに札幌まで出かけて来た。身銭を切る嬉しさ、おんつぁんと、六つになるおん

板まで引きはがされる程の綿密な捜索を受けてゐた。札幌で営業を停止されたばかりでなく、心あたりの就職の道は悉く杜絶し

勃凸がおんつぁんを追ひかけて、着のみ着のまゝで札幌から飛び出して来たといふことを知つた。

「これ札幌にもあるよ」

た。したら俺の叔父さんが、盲目の叔父さんが小樽から俺らことおんつぁんのとこに捜しに来たつけ。おんつぁんとこさ

けれどもおんつぁんはたうとう勃凸をまいて東京に出て来てしまつたのだ。而して私に今までのやうな話を

その後一週間ほどして、意外にもおんつぁんが再び東京に舞ひ戻つて来た。おんつぁんの予期してゐたやうなこと

。二人は私の行く方へと従つて来た。日比谷の停留場に来て、私は鳥料理の大きな店へと押し上つた