星座 / 有島武郎
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というのはジロンド党員の陰謀を密告するために、わざわざカンヌから彼を訪れたのだといって、昨日以来面会を求めている年の
たまま、その胸は短剣に貫かれて横わっている。カンヌから来たという美しい処女シャーロット・コルデーは血の気の失せた唇から「私は
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十月の始めだ。けれども札幌では十分朝寒といっていい時節になった。清逸は綿の重い掛蒲団
札幌に来てから園の心を牽きつけるものとてはそうたくさんはなかった。ただ
札幌に来る時、母が餞別にくれた小形の銀時計を出してみると四時半
碁盤のように規則正しい広やかな札幌の往来を南に向いて歩いていった。ひとしきり明るかった夕方の光は、
坂というものの一つもない市街、それが札幌だ。手稲藻巌の山波を西に負って、豊平川を東にめぐらして
大原野を駈け通った。小躍りするような音を夜更けた札幌の板屋根は反響したが、その音のけたたましさにも似ず、寂寞は
するつもりだというところから柿江は始めた。高所は札幌の片隅にもある、大所は女郎屋の廻し部屋にもあると叫んだ。
「俺が札幌にいりゃ、この幕は貴様なんぞに出しゃばらしてはおかなかったんだが」
札幌のような静かな処に比べてさえ、七里隔たったこの山中は滅入るほど
はもうそのほかに何んにも聞く必要はなかった、札幌に学んでいることすらも清逸の家庭にとっては十二分の重荷である
格別の感激の種にはならなかったけれども、それだけ札幌の自然は彼の心をよく知り抜いてくれていた。
て聞かせたってろくろく分りはしないのだから、俺は札幌の方を優等で卒業したから、これから東京に出て、もっとえらい大学
とは俺は思わなかったよ。トゥヰンビー館といえば、札幌の演武場くらいを俺は想像していたんだが、行ってみたら
専門学校に行って矢部さんの講義を聞こうとおもう』、『札幌から紹介状でも貰ってきたか』、『来ん』、『じゃ俺が書く
ばいいなと他人ながら心配がるくらいだ。図書館の本も札幌なんかのと比べものにならない。俺は今リカードの鉄則と取っ組合をして
住み憂い所のようにこのごろ清逸は感ずるのだった。札幌にいて、入らざる費用をかけていながら学校に出ないのはばからしい
「兄さん、お前はまた札幌に帰るのか」
という元孵化場で同僚だった鞘取のような男が札幌から来て、長いこと話していった。お母さんが立ち聴きした様子から考えると
、どうもそうらしい。しかもお前を貰いたいというのは札幌の梶という男じゃないかと思う。それならその男は評判な高利貸で
「名か、名はその、梶といって、札幌では……」
思えた。実際をいうと、園は帰京せずに、札幌で静かに父の死を弔らいもし、一家の善後ということも考え
遠くから来た旅客がいぎたなく寝そべっていた。八時に札幌を発った列車は、雪さえ黒く見えるような闇の中を驀地に走りだし
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「僕はたぶん明日親父に会いに千歳まで帰ってくる。都合ではむこうの滞在が少し長びくかもしれない。できる
からは昨日手紙を貰ったっけ。すっかり冬が来るまでは千歳にいるのだそうだ。別に健康が悪いというのでもなさそうだ
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聞いた。上野と浅草と芝との鐘の中で、増上寺の鐘を一番心に沁みる音だと思ったり、自分の寺の鐘を撞き
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いうのは、まだ若くって頭のいい人だったが、北海道というような処に赴任させられたのが不満であるらしく、ややと
自分の健康が掘りだしたばかりの土塊のような苛辣な北海道の気候に堪えないからとは言いたくなかったので、さらに修業を続けたい
にかかったんだ。今じゃお前水田にかけては、北海道切っての生神様だ。何も学問ばかりが人間になる資格にはならない
「中島は水田をやっているうちに、北海道じゃ水が冷っこいから、実のりが遅くって霜に傷められるとそこに気
方で評判になると、似而非者が五六人できて、北海道をあちこちと歩き廻るようになったんだ。……それに違いない。それに
よ。室蘭か、函館まで来る間に、俺は綺麗さっぱり北海道と今までの生活とに別れたいと思って、北海道の土のこびりついている下駄
綺麗さっぱり北海道と今までの生活とに別れたいと思って、北海道の土のこびりついている下駄を、海の中に葬ってくれた。葬って
て、久しぶりで内地の土を歩いた。けれどもだ、北海道に行ってから足かけ六年内地は見なかったんだが、ちっとも変っては
日が暮れて、雪は本降りに降りはじめていた。北海道にしては大粒の雪が、ややともすると襟頸に飛びこんで、その
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。奥さんは失礼だという顔もせずに、すぐに銚子を近づけた。
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たようなものだ。ろくな元資も持たず七年前に富山から移住してきた男だったが、水田にかけては経験もある
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たのはまずいいとしても、妹のおせいに小樽で女中奉公をさせておかねばならぬというのは、清逸
いる純次の寝顔を、つくづくと見守った。それとともに小樽にいる妹のことを考えた。三人のきょうだいの間にはさまったおびただしい
仕送って家からたまに届けてよこす衣類といっては、とても小樽では着られないものばかりなので、奥さんからは皮肉な眼を向け
の一つらなりだった――を思いめぐらした。始めて小樽に連れだされたのは十七だった。まるで山の中から拾ってきた
ざれ。彼女は我が一家の犠羊なり。兄の知れるごとく今小樽にありてつぶさに辛酸を嘗めつつあり。もしさらに一二年を放置せば、
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んだが、柿江の奴今ごろは困っているだろう。青森では夜学校の生徒の奴らが餞別にくれた新しい下駄をおろして
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なら僕は秋のうちに……冬にならないうちに東京に出たいと思っているんだがね。そんなことは貧乏な親父に
「では君もいよいよ東京に行くの」
「西山は本当に東京に行くつもりなのか」
ところで貴様、それが何んの足しになるかさ。東京に行ってひとつ俺は暴れ放題に暴れるだ。何をやったっても人間
聞きたがらないし、自分の一存としていうと、当節東京に出ての学問は予想以上の金がかかるから、こちらは話によっ
いろいろに世話をかけてありがとう。達者でいてくれや、東京に行ったら甘いものを送るぞよ』……」
「星野さんはお留守だし、西山さんはきゅうに東京にな、お発ちなさるし、婆やは淋しいこんです。いい人でな、
「俺はやっぱり東京はおもしろい所だと思うよ。室蘭か、函館まで来る間に、俺は
俺は札幌の方を優等で卒業したから、これから東京に出て、もっとえらい大学で研きをかけるんだといい聞せておいた
『おとうさまは知るまいが東京には University という大学があって、象山先生の学問に輪を
「けれどもだ、何をいうにも東京なら近いからということで、俺はとうとう郷里を出た。 Student
たのだろう、それをかっこむ音が上り口からよくきこえた。東京にこんなことをやって生きている人間があろうとは俺は思わなかった
「東京は俺にとっては Virgin soil だ。俺は真先に神田の
はよし』(なんだべらぼうめ――べらぼうという言葉は東京の書生がことごとに使う言葉で、俺はその後に使い覚えた。けれど
もマルタの方によけい頭が下げたいぐらいだったから。東京の女は俺の眼から見ると皆な天使のようだぞ。
といって彼は即刻東京に出かけてゆく手段を持ってはいないのだ。神経衰弱の養生の
自身の存在を明瞭にし、それが縁になって、東京に遊学すべき手蔓を見出されないとも限らない。清逸は少し疲れ
を背負いこんで薬代だけでもなみたいていでないのに、東京へ出かけようといってさらに聞かんのだ。俺もこうやってはいるが
とす。坐視するに忍びざるものあり。幸いにして東京に良家のあるありて、彼女のために適所を供さば、たんに心身の
。想像したというよりは自分がずっと育ってきた東京郊外の田舎じみた景色や、父、母、兄などの面影やが、
決心をやすやすとしてしまっていたのだ。それは東京に帰ろうと決めたと同時に、特別な考慮を廻らさないでも自然に
のことをお聞きくださいまし。……僕は今夜きゅうに東京に帰らなければなりません。少し思いがけない不幸に遇いましたから。その
ぬいさん、園さんがお帰りだからお見送りなさいな。東京の方にお帰りだというから――」
なかった。婆やも来てはいなかった。人見が「東京に行くとおもしろい議会が見られるね。伊藤が政友会を率いてどう元
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か、梵鐘の音を園は好んで聞いた。上野と浅草と芝との鐘の中で、増上寺の鐘を一番心に沁みる音
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なのか、梵鐘の音を園は好んで聞いた。上野と浅草と芝との鐘の中で、増上寺の鐘を一番心に
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にとっては Virgin soil だ。俺は真先に神田の三崎町にあるトゥヰンビー館に行って円山さんに会った。ちょうど昼飯時だっ
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ふと農学校の一人の先輩の出世談なるものを思いだした。品川弥二郎が農商務大臣をしていたころ、その人は省の門の