軽井沢 七里ヶ浜 霧積温泉 鼻曲山 トルキスタン 満洲 法隆寺 長崎 松山 奈良 東京

Ｈ君夫妻が、終戦後はじめて軽井沢の別荘びらきをするといふので、われわれ旧友二三人が招かれたことが

を飲んでから、僕は海岸へ出てみた。ちよつと七里ヶ浜を思はせるやうな荒れさびた浜だつた。薄ぐもりの空の下で、

てもいいと言ひ出した。それなら都合によつては、霧積温泉に泊る手もあるといふのである。

の提案をしりぞけて、一文字山から網張山を経て鼻曲山へ出る尾根歩きならお附合ひしてもいいと言ひ出した。それなら都合

たりして、女連中の足はなかなか捗らなかつた。鼻曲山の頂上にたどり着いた頃は、落日が鬼押出の斜面に大きくかかつてゐた。

、遂にその殖民地になつたのだといふ。いはばトルキスタンとフンと漢と、この三つの勢力が早くから抗争して交流して

たらしくある――）、それにもう一つ、朝鮮や満洲に十ほど病院を建てて来た、といふことだけだつた。口数の少ない

の五年ほどは京城にゐた。つぎの七年は満洲にゐた。そのあひだにまづまづ自分の仕事と呼んで差支へない病院を、

その仕事が済むと、まもなく太平洋戦争になつた。満洲の建設どころではあるまいから、その辺で見きりをつけて、外地歩き

は好きだ。朝鮮の頃はさうでもなかつたが、満洲ではついぞそんな心の休まるやうな時にめぐまれなかつた。僕はだんだん引き入れ

眺めたりした。壁画は、色彩といひ描線といひ、法隆寺の金堂のあれにそつくりだつた。僕ははげしい郷愁を感じた。もつとも

ない艶聞をからかつたりしたものだ。大学を出ると長崎へ行つて、はじめは医大につとめ、やがて開業した。日本人の細君を

何かしら苦しい沈黙だつた。するとその時、すぐそこの松山の中でギギッとけたたましい啼き声がした。同時にするどい羽音がして、

頃Ｙ教授に引率されてちよいちよい見学に行つた奈良の寺々のあの dim light を思ひだした。僕は僕の青春

僕ははげしい郷愁を感じた。もつともその郷愁は、奈良へ向ふよりは一層つよく西方へ惹かれるものだつた。僕はためら

眼には何か見どころがあつたらしい。Ｇは卒業後しばらく東京のＴ工務所につとめたのち、ちやうど京城に新たに建つことになつ