老主の一時期 / 岡本かの子

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江戸

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縮緬の丹前、娘達の別れがたみの人形、宗右衛門自身が江戸の或る大名家老から頂戴した羽二重の褥が紅白二枚、死出の旅路を

て寝酒の微酔でやつて来る時さへあつたのに、江戸への出入も店の商売もとかく怠り勝ちになつたといふ此頃の忙し

で辛うじて八九歳までの寿命を延ばしたに過ぎない。そして江戸の或る御用商人の小僧にやられた。覇気と頑強と、精力的なので

江戸の西郊、彼の卜した地の利も彼に幸ひした。彼のその

広大な屋敷内に羅列する幾十の倉々から荷を載せて毎日、江戸へ向けて出発した。江戸へ三里の往還には、いつの日もその

倉々から荷を載せて毎日、江戸へ向けて出発した。江戸へ三里の往還には、いつの日もその積荷の影を絶たなかつた

その積荷の影を絶たなかつた。彼の身辺には江戸近郷、遠くは北国西国の果からまで、何百人かの男女の雇人が密集

さうした行跡は殆どないと言つてもよかつた。江戸の主家に居る時、ほんの小僧の時、一度、若者になつてから二三度

武蔵野

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が、その藩が一不祥事の為め瓦解に逢ふや、草深い武蔵野の貧農となつて身を晦ました。宗右衛門の両親は、その不遇の為めに