四谷 高崎 信濃川 赤堀村 赤城山 赤城神社 関西 門前町 神楽坂 牛込 堀川 大阪 江戸 鎌倉 赤城 武蔵野 駒ヶ岳 関東 東京市 秩父 箱根 金山 浅間 テキサス州 中之島 ロンドン 八丁堀 横浜 下野 駒場 清光寺 赤坂 カレワラ 豊川稲荷 銚子 両国 染井の墓地 下谷 松山 京都 秋田 奈良 巴里 前橋 山形 福井 佐賀 新潟 甲府 深川 東京 日暮里 目黒 曳舟 浜町 銀座 大久保 日本橋 蔵前 人形町 上野 神保町 神田 新宿 伊勢崎 市ヶ谷 館林 西新井 草加 越谷 千住 向島 京橋 隅田川 両国橋 新大橋 日本橋川 神田川 東京湾

母には、四谷の津の守で芸妓屋の参謀をしているふだんは音信不通の弟が

旧家で、その家から山の薬草を蒐めて出す取引先の高崎の薬種問屋に青年は預けられていました。一粒種の大事なその息子は

石とかに興味を持ち、辛うじて学校を卒業すると、信濃川の流域を上下し、甲武信の山中に分け入ったりして十年ほどの無為の

その伝説の長者の家を、赤堀村の道玄といったり、小菅又八郎だといったり、所と人によって違う

「赤城山に出る天狗は団扇天狗というのだ。猟師の持つ鉄弾丸は惧れるが鉛弾丸

ながら、なおも眼の前に磐石に控えている山が赤城山であることは、教えられずとも今朝宿屋を出るときからわたくしに判っておりまし

「ずっとこれがみんな赤城山なの」

極寒の季節には磯部の温泉へ、極暑の季節には赤城山の山頂の湖辺に連れて行って自炊宿で療養をさした。そのためもあっ

「赤城の上に在ります赤城神社の祭礼は、五月八日が本祭り、四月八日は蔭祭りと

「鳥はあの小鳥ヶ島と、赤城神社のお宮の樹にいちばん早く来るだね。すると、山はまず春だ

この日、私たちは赤城神社に詣で、小鳥ヶ島を尋ね、それから湖の岸のわきから黒檜へ

かいな」と唄い切ると、そこで藤間にやゝ関西の西川流を加味した母親仕込みの捌きのいゝ足拍子を一つとんとして

音に聞く太田の呑竜さまへお詣りしました。門前町には茶屋、旅籠が軒を並べ、客をひく婢の声は鄙びており

神田の神保町通りでもなく、また上野の広小路、牛込の神楽坂、麻布の十番でもなく、この東京の下町の盛り場の賑いは一風変っ

なく、神田の神保町通りでもなく、また上野の広小路、牛込の神楽坂、麻布の十番でもなく、この東京の下町の盛り場の賑いは

石垣の乾きにもう初冬の色を見せている堀川は黒い水の上にうそ寒い夕靄を立てゝいます。河岸の賑かな商い店

凝って乞食に成り下ったものもある代りに二十歳台で当時大阪の学界で碩学の誉れ高かった夭死の人物もいたという。わたしの父

ざっと次のようでございます。維新の騒ぎの後に江戸で禄や職業に離れた人間の幾人かゞこの町に入り込んだが、

江戸は太田道灌の時代、上杉の時代、北条の時代と変ったが、これ等

て越後から武蔵に入り、再挙を図りつゝあったとき、鎌倉の足利氏では佐京某というのを義興に接近させ討取ろうとした

なり、昨日来た先生からの手紙によると、先生は赤城の麓の実家へ戻っている。そして、そこでこの事件が何とか片付か

手に届いたのは、はじめ二十日ほどの間に、赤城の麓へ帰った安宅先生から何の返事も来ないという報らせの手紙が

て、それが受容れられないところから、暮の十二月に赤城の麓の郷家へ帰ったきり、年も越えた正月の学期始めになっ

の実家の農家の古い座敷で勉強していた。なるほど赤城の山がよく見えた」

「これから、赤城の麓へまでか」と問い返しましたが、すぐ、

養蚕の季に入ったので家の中がうるさいって、赤城の上へ勉強しに行かれたそうだ」

「赤城の山独活の漬です。お摘み下さい。新しく桶から出すと香気は高いのです

「この奥の御座敷で、そりゃ赤城が真正面によく見える」

赤城の山――平野にこれだけの異変を擡げている大量な土塊が、この

赤城の山頂には火口原湖として大沼と小沼と二つの湖水があっ

家で十六になる美しい一人娘があった。或る時しきりに赤城の登山を望んだ。そこで長者は娘を駕籠に乗せ、供人も多くつけ

「赤城の上に在ります赤城神社の祭礼は、五月八日が本祭り、四

女学校を卒業した先生は、それから一人で頻りに赤城の山頂へ閉じ籠って勉強するようになった。山から下りて村に居るとき

あります。その先は桑畑になっていて、上に赤城の山はこゝからは左の方六分ほど覗けます。相変らず平ぺ

心から突き上げて来ましたので、「あたし、これから赤城へ行くわ」と言いますと、葛岡も、

私たちは板橋の口に待たせてある自動車で赤城の登山口まで急がせました。

赤城の登山道もほとんど登り切って、新坂平とかいう、そこからは、もう

赤城の山を降りながら、葛岡は、しお／＼と言います。

げな顔を挙げて、こゝからはだいぶ離れて来た赤城の山かげに眼をやりました。

こう恋々と山を眺め続けるうち、わたくしはなる程、先生が赤城の山を好くのも道理だと思って来ます。地殻に阻まれた地球

むかし秩父から山を下りて来た畠山の子孫が、武蔵野に拠住して江戸氏を唱えましたが、その中で有名なのは、

火口原の周囲を取巻いて、黒檜だとか駒ヶ岳とか薬師岳などという山々がありますが、半ば雪が解けていたり

は百瀬家の家臣筋で、天文の時分に北条氏康が関東席捲の際には上杉方に味方した百瀬の主人と共に大師河原に

終りますと、湯に入り、軽くお化粧して食事がてら東京市内へ出かけて行きます。二人、三人と別れて、文楽の浄瑠璃を聴い

山脈の上に富士が覗くこともあります。右手に遥か秩父の連山が浮いています。

何か別な一群が吹き寄って来ました。それは秩父の山を越えて来る渡り鳥です。

へ出て、そこから多那川を見下し、対岸の丘陵から秩父の山を見渡すときに二人は、超越の世界に超越の心情に充たされた

秩父の山中から流れ出て、東京湾に流れ入る多那川は上流で早くから山岳地帯から離れ

に分け入ったりして十年ほどの無為の年月を過し、秩父の奥からぶら／＼多那川の流域に沿ってこの鷺町に辿りつく頃に

。雲はすべてそっちへ掻き寄せられたように大山の山脈から秩父の峰へかけて濃く棚引いています。それでもその上へ抽んでゝいる

むかし秩父から山を下りて来た畠山の子孫が、武蔵野に拠住して江戸氏を

その起点を多那川と共に秩父の峰から起し、川の上流で一たん川から遠ざかった山岳地帯は、川を

晴れた日は大山から箱根の山脈の上に富士が覗くこともあります。右手に遥か秩父の連山が

唄に名高い太田の金山は青々と若木の松に覆われています。この山頂からは関八州の

色の峰の塀を、あれが榛名、妙義、それから浅間の連峰だと言いました。いま既にその裾野の傾斜に乗りかけながら、なお

ものは海外渡航に眼を向けていた時でした。テキサス州の移民米作ということが頻りに世間の口に唱えられていました」

この中之島には亭々とした三がい松以外には源平染分けの椿、四季咲きの

は「義光ちゃん！」と呼びます。「イヤース」と、ロンドンのシチー訛りを気取って返事をする慧敏な義光ちゃんのいつもの声が聞えます

。その癖に医者は嫌いで、薬は廉いで有名な八丁堀の薬屋というのへ容態を話して売薬を買って来るという下町の旧弊

父親は一方非常な飲酒家であった。洋酒の種類を横浜から取寄せ、大座敷に控え、朝からちびり／＼とコップから飲みながら、用事

その旦那と女はお秀のとこのモーターボートに乗って無断で横浜の磯子まで海を渡って泊り、ボートを返しには磯子の旅館の男が

に遠ざかり兼ね、太田の町外れからバスがあるのを幸い、下野の平野を山の遠輪に沿うて横へ利根川べりの妻沼の聖天まで走ら

葛岡は園芸学校へ通学しなければならなかった。葛岡は駒場の辺りに空地附の小さな家を借り、そこで花を作っては鉢植えに

屋根の上に高く抽ん出て、この辺での名刹清光寺の本堂の屋根が聳えています。それから少し川とは反対側に傾い

朝早く涼しいうちに起きてわたくしは鷺町に入り、清光寺の境内の人の目につかぬところで、寺の仏飯の残りを貰って

上でお秀を是非貰いたいと言って来たのは、清光寺の住職と町役場の助役でした。いずれも町の知識階級層には違いありませ

それでも町裏の製紙工場の社宅の傍にもあれば清光寺の卵塔場にもある。そしていずれも文吉のいる多那川橋には近い。たゞ

のだ。文吉が山椒の葉を採るのに橋に近い清光寺の卵塔場にも行かず、製紙工場の社宅にも行かず、遥かに遠いこの

一筋の往還の両側に高低の建物を並べ、特に抜き出て清光寺の堂棟と散木と渾名される巨木とが目につきます。

当時赤坂の竜土町に甲州出で天下の豊島と呼ばれている事業家がいました

信心やら占やらで、きょうも、わたくしの旧学園友達の赤坂の吉良の家へ何事か手蔓を探り出すべく訪ねた帰りに豊川稲荷へお百度を

たあと、「これは芬蘭の農民たちが唄う郷土詩典カレワラの民謡詩の一つですよ」と言いました。芬蘭は、先生が体育

の吉良の家へ何事か手蔓を探り出すべく訪ねた帰りに豊川稲荷へお百度を踏みに行ったのだと言いました。

先生に勧められるまゝ私たちは宿の主に連れられて、銚子の伽藍の方へ見物に行きました。「とても、そこまでは行けまい、

夏も盛りになり、両国の川開きが催される頃になりました。こどものときから毎夏、川沿いの知合

墓所もないので、母の弟が家を受け継いでいる染井の墓地へ葬りました。母の弟は不承々々にそれに承知しました

で会席料理を御馳走して呉れました。葛岡は晩、下谷の腰掛け店で厚揚げのカツレツを御馳走して呉れました。いずれも身分相応

は大変な学者で大学の先生もしている。母は下谷の雛妓だった時分に父に見染められて、それからずっと囲われている

ちゃんと特等と一等と並があるんですからね。なにしろ下谷で雛妓時代にも、いい姐さんが泣かされたといいますからね」

時代に宝探しということが流行って、或る豪奢な旦那が下谷の名雛妓十人ほどを集め、伊予紋の庭でそれをさせた。

模様が古びている信玄袋です。中を開けると、母が下谷で雛妓をしていたのを父に受出された時分の身じまいの

で会席料理を御馳走して呉れました。葛岡は晩、下谷の腰掛茶屋で厚揚のカツレツを御馳走して呉れました。いずれも身分相応

松林が混ると、地層はだん／＼に高みを増し、松山続きとなると、川と平行して川下へ下る大きな尾根の丘陵にまで

この寮の庭は京都の建仁寺塔頭の一つ、霊洞院の庭を摸したという話です

があったりするその向うに、毀れかゝった土蔵倉と、京都三十三間堂のように横長い物置長屋とは、たとえ古びておれ、表の母家

ボイルドした秋田産のシギ鱈は季末になって、かなり脂づき、フォークで一へぎ

なりました。それを思い出すことによって、この男の秋田人らしいのを思い当てましたことが何となくおかしく、うつ向いて笑いを堪え

であるのを観破しました。学園の割烹の先生で秋田出身の割烹家があります。お漬物の講義の場合にその先生の口

あるのに気付きましたが、このおすんこによって秋田訛りであるのを観破しました。学園の割烹の先生で秋田出身の

まだ父母恋しい十二の幼年のときから、秋田在の親の家から伽藍のような東京のお店に住み込み、同輩も男

に作り附けたように大きな赭ら顔が載っていて、ちょっと奈良の一刀彫のようです。老けて見える割に歳は歴ってないらしく、太い

人の話によると、料理なども洒落ていて、巴里などよりも小味があるそうだ」

秋雄はさすがに大きく笑った。わたしは秋雄に勧めて、巴里の新流行歌「ジュ、ジュの唄」を輸入の楽譜によって唄わし

に子供らは摘草をしています。右手の方に前橋、伊勢崎の煤煙も望めます。

て、先生はいくらか丈夫になり、女学校へ通う時分は前橋まで四里往復ほどの道を海老茶袴で自転車に乗って通ったりしまし

を脱いで眼に近々と萌黄色に迫って来ました。山形をくっきり浮き出さして昼近い空はいよ／＼澄み青んで来ました。

満館のネオン。私達の船は浜町河岸へ出て、福井楼の下の一区劃に船の住居を割当てられました。市街と同じ

酒呑みのわたくしの父は、酒の肴に佐賀の名産のガン漬けというのをよく取り寄せて食べていました。有明

が享楽の生活にも飽き、少し真面目になりたいと、新潟の地を離れて松本の農学校に入って勉強し出した頃には庵

つつが虫で有名な越後の――で生れ、新潟で中学教育を受けるうち早熟な花田は花柳界で遊びを覚え、学校を卒業

いる渓川の水車小屋に寝泊りしていた。前身は甲府の酌婦だというものもあれば、遊女もしたことがあるという

「元禄の頃、こゝから斜の向う河岸の辺に深川の芭蕉庵があったらしいんだよ」

前方には、晴れたまゝ暮れて行く深川区の空の下に大川がだぶん／＼と水量豊かに流れているの

がですな、大川へ流れ出て、潮の加減で向う側の深川の竪川堀へ流れ込みそこで発見されたんです。その竪川河岸には

のは、旧幕の頃、この辺から猪牙で山谷堀や深川へ遊客が通った時分の名残りの風習だということです。

を突き、頬杖の掌の間に挟んで東北の方、東京の夜空に振り向かしたわたくしの顔には、左様――たぶん娘時代のモナ

性の光りが闇の前景に反射します。では口惜しい東京ながら一度だけゆっくり見納めて置こう――わたくしは哀しい太々しい気持を取出して道端

、多那川の灌漑地帯の田や畑地が見え、左寄りに東京から相模へ往来する電車の線路が見え、橋の両岸に町になりかけの

ついそんなことで暮にまで押し詰まり、うやむやのうちに先生は東京にいるのも面白くないといって年内からスキーに行かれたのであっ

帰らないと告げ知らせて来た。先生は書いている、もはや東京も学園も自分にとっては憂いところになったと――。

弟子である。それ以外の気持はない、だからどうか東京へ帰って欲しいと言って上げたら、蝶ちゃん、先生はあんたがこの世の中

の父親に向ってもこう手厳しい態度になれることに就て、東京の下町の雇人間でお店大事の制度が、親を越えたその子に

のときから、秋田在の親の家から伽藍のような東京のお店に住み込み、同輩も男なら、仕附け役の手代番頭も男。

、この室内とこの人間との雰囲気の醸す感じからは、東京の下町というものが一方洒脱でありながら一方ローカルなものを持っている

広小路、牛込の神楽坂、麻布の十番でもなく、この東京の下町の盛り場の賑いは一風変っております。そう、たいして広い間口の

形で、たゞしょんぼりと力抜けがするだけでした。いまから東京行の汽車でもあるなら、いっそ逃げて帰り度いくらいでございました

、田舎の夜とては一層に不勝手なわたくしには、東京であれほど弾んだつもりの安宅先生説得の意気込みも、いつか、相撲の

は、実家の言うなりに思い諦めたらしく、受験をかこつけに東京へ出て、それきり帰らなかった。先生は黙って打ち沈んでいた。

も全然反対の方に造り直して来るのだと言って、東京へ出て行きました」

に駆られたほど、幽かに気高い笑いでした。わたくしは東京を出発するまえ葛岡が「先生の笑声は僕たちがじくざくして

頃は、明星派の歌人だったとかいう話で、東京へも何度か出たことがある。で、なつかしさにむかし新詩社の

見て、身体がくた／＼になったわ。いますぐ東京へ怒られに帰る勇気なぞありやしない。お金があるうち、どっか

急いで帰ったとて破綻の外、何一つ待受けている東京でもありませんから。

へ形さながらに現して彷徨いたしました。いくらかずつは東京へ近づいて行きますものゝわれながら気だるげな様子であります。急いで

つもりのものとては一つもありませんですけれども、東京で池上と交際えばその青年を妙な神秘憧憬病患者のようなこと

にしてしまったものらしくあります。わたくしがこの青年と東京を発った動機は、安宅先生に咎められていると信じたこの男の

上衣を持って立上りかけました。この段階になるとまた東京の下町の女には、相手を手もなく阻み止める慣用手段の言葉が

「僕もなあ、実は東京へ残して置いたことが気になり出したものだから、つい――

葛岡の言う東京へ残して置いた気にかゝることとは勿論、家族のことでした。

「東京へ帰ったら、あたしが何とかするわ」

醜いと思うほど落付きを失って、「まあ、いよ／＼東京」と言って、車の窓から乗出さんばかりに眺めます。するとおかしな

ては大旅行だった田舎の旅から帰って来ての東京は、銀座は、幾年振りかでふる郷へ戻ったようで而か

わたくしは自分の方も変り果てたが東京の家もいよ／＼変っていると歴劫不思議の感じがしながら、

よく知っています。それを選び取って食べながら窓から見張らす東京郊外の田園の景色、蝉が丘を揺がすばかりに鳴立てゝおります。

終りますと、湯に入り、軽くお化粧して食事がてら東京市内へ出かけて行きます。二人、三人と別れて、文楽の浄瑠璃

いう連中も混って餓鬼大将の会というのを慥えて東京中を押し廻したものさ」

を突き、頬杖の掌の間に挟んで東北の方、東京の夜空に振り向かしたわたくしの顔には、左様――娘時代のモナ・

性の光りが闇の前景に反射します。では口惜しい東京ながら一度だけゆっくり見納めて置こう――わたくしは哀しい太々しい気持を取出して道端

は暫らくこの界隈に滞ります。町の東側を多那川から東京方面へ引いた運河が殆ど多那川と直角に南から北へ向って流れ

心頼みにしながら南へ移って来たのでした。旧東京市区の繁華な町には既に乞食の縄張りやら、専門々々の貰い

にふた月と、わたくしは旧東京の市区と、大東京とは名のみの郡部とのすれ／＼の境界線に沿うて、彼方に

ひと月、かしこの橋下にふた月と、わたくしは旧東京の市区と、大東京とは名のみの郡部とのすれ／＼の

。もとこの枝川は染物を晒したばかりでなく北に当る東京から南の多那川への曳船の河筋にも使ったので、両側の

東京へ売出すのを目的に栽培された草花の畑には今、芍薬やら

橋の上は今東京から鷺町附近の村へ帰って行く人や車でやゝ往来が激しく

それでもまだ、この川に馴染んだ竿味を忘れかねる東京の下町の釣人や近所の工場に出ていて遠出の時間を持たない

たのでしたが、そのとき、他町の乞食が而も東京市と神奈川県との境を越して町を侵したというので鷺町

モダンな橋柱が見え、朝日に光っています。村から東京へ野菜を運ぶ荷車が一かたまりになって行く後姿が見えます。この往還は

耕作人は少く新に税が賦課される時代で東京近在の田畑の中には酒一升つけて無価で貰ってもらうという

次男の啓司はインテリ風の青年で主に東京にいて学校生活の経路に入っていた。三男の常司は何処

忠一は女の言うまゝに東京の場末の繁華地に小料理屋を出さしてみたりＦ――町の遊廓の

この川ともう一つ川を越した東京寄りのＥ――郡内に女塚というのが七つある。新田義興

家の長兄の繁司の手を煩わしました。繁司は主に東京にいる関係もあり、大概の事はこの末弟に代理を頼みました。

尾根山の象ヶ鼻の瀞の頁岩へ、東京の事業家が目をつけ出したという報せを啓司から町のスタフ達は

。この地質は多那川を越して東京の中まで延び、東京の山の手の高台にもなっているものだそうです。この丘陵は松の

丘陵をなしています。この地質は多那川を越して東京の中まで延び、東京の山の手の高台にもなっているものだそうです

といって、それからかの女はその気持ちを持ち続け東京の自宅へも招ぶようになりました。わたくしもはじめてこの世で慕わしいこゝろが

わたくしが鷺市会館の賄の買出しの事などで東京に出るときお艶に悦ばれるまゝちょくちょくこの市塵庵に立ち寄りましたが、

いう大師匠だった。日本ばし数寄屋町の花柳街に住み当時東京中で名うての幇間だった。普通のしもた家造りに住み、普通市民の

を名乗っていた。滝廼家の大師匠といえば東京のみならず三都の芸人間にも江戸幇間の明治中興の祖のよう

度い若気の競争心もあったらしい。かの女の生れは東京近在の零落した旧家という話で、かの女はその身元を生涯明かさ

て意外に宥められるような気がした。老妓だけを東京へ返し、わたし達はめい／＼相手としての芸妓を一人ずつ連れ、

憲法発布の明治の頃、日暮里の貧民窟の東西長屋に住んでいて、日々、市中の山の手を貰っ

まして、弟が相続人です。で娘は婿につけて目黒の別邸の方へ家を持たせられました。この姉娘の婿――

秋の日曜の朝、目黒の父の家の夫人からわたくしに秋祭りがあるから遊びに参れとの使い

わたくしはお土産の栄太楼の最中の折箱とちょこなんと並んで目黒に向いました。

あとで目黒名物の栗のご飯が出ました。わたくしはこういう炊き込んだご飯が大好き

な顔がませさせてみせました。あのわたくしを苛めた目黒の別邸の夫人にちょっと面立ちが肖ていることがわたくしに何か皮肉な

言葉を取り交わしたのは父の生涯に死の前、目黒の別邸で会ったときは別として、たったこれ一度だけのようと

も沢山あります。別けても、父の死の前、目黒の本邸で人目を潜ってわたくしに父を合わさして呉れ、父のその

曳舟蒸汽の汽缶や汽笛の音はしば／＼川づらに響く。斜に見える

に聳える国技館の大きな丸屋根。河心の一銭蒸汽は、曳舟蒸汽を追い越して、河岸の石垣に、あと浪を寄せつけて行きます。幼馴染

覚悟するとき、眼を瞑って頭を一つ振れば、曳舟が曳かれて行くあの蒸汽船から曳綱を外ずしたように前途の

力を入れました。旧派の宗匠や、新傾向の俳人が浜町の寮に招き寄せられた。

にないと思って、暮に池上に会ったとき正月は浜町の寮に一人でいるから是非遊びに来いと言っていたのを思い出し

浜町というところは、今は人家櫛比してその面かげもありませんけれど

わたくしは正月にこの浜町の寮へ池上を訪ねて、その日はそのまゝ帰りましたが、胸

、瀬戸物町の店へ度び／＼訪ねて来まして、浜町の寮に蝶子さんがいる筈なのに電話をかけても面会に行っ

や小料理店や、ちょっとした茶房があり、右側は、浜町公園の側面に当る、その細道を、わたくしたちは歩いて行きました。

の支度と見え、下座の三味線らしい音が聞えます。じき浜町河岸へ出ましたので、わたくしはそこの河岸ぎわに佇んで、ちょっと

食堂の入口の計数器の前には夏場に公園で催される浜町音頭の踊り子仲間の娘もいます。それ等のいる中へ、いま、

瀬戸物町の店とを往来し、また、とき／″＼は浜町の寮へも立寄って来る間に池上とわたくしの結婚談は氷へ湯

橋のたもとに国技館の満館のネオン。私達の船は浜町河岸へ出て、福井楼の下の一区劃に船の住居を割当てられ

いう男の子たちの言い残しでしたから、わたくしは八重子を連れて銀座へ出ました。

クリスマスが無いなら、今日はこっちだけで、一日遊ぼう。銀座へ出て待っていて呉れという男の子たちの言い残しでしたから、わたくし

時間まではまだ、たっぷり間がありますので、充分に銀座の東側、西側を見て歩きました。ふと、今年の春に慈善の

度は薄いけれど、やはり靄がかった暖い日で、見渡すと銀座一二丁目の華やかな建物から京橋に向う高層建築は真珠細工のように潤ん

それは、銀座でもなく、新宿でもなく、神田の神保町通りでもなく、また上野

なると二人は殆ど物も言わないで、円タクを拾い、銀座へと急がせました。

「何はさし措いても先ず銀座で苺のシアーベでも食べ度いじゃないの」

旅行だった田舎の旅から帰って来ての東京は、銀座は、幾年振りかでふる郷へ戻ったようで而かも眼新しく

た時分に中どころの植木屋であった葛岡の家も、大久保が町中となり、父がリウマチスを重らして床に就き、間も無く

むかし大久保が躑躅の名所であった時分に中どころの植木屋であった葛岡の家

をするというのも蝶ちゃんは窮屈だろう。そうなあ、日本橋倶楽部なら、こゝから近くていゝ。あすこの食堂でお茶でも飲みながら

だぶん／＼と水量豊かに流れているのを望みながら、日本橋倶楽部の楽屋に沿って歩いて行くと、公演の支度と見え、下座の

寮を出たときからの昔馴染の町並や大川の様子、日本橋倶楽部の食堂での町の人との接触、それ等は、あまりに官能

の通りに来ました。河岸の家並の間から見透かされる日本橋の橋欄。そこには獅子や麒麟の像の橋柱に夕顔いろの灯

今年の桃の頃、初雷が鳴ったとき日本橋の寮で、雷嫌いのわたくしは座敷の中を周章て廻りました。その

なさみだれ月のすみだ川。その水はわたくしの生れた日本橋の家の裏手に在る濠割にも続いているのです。うれしい、うれしい

ありました。このおじさんは市塵庵春雄と号して、日本橋に在るその庵は、嘗て江戸派の元老俳人で市塵庵四季雄という

の幇間のところへ内弟子に遣られた。わたしの父は日本橋界隈でいくらか名の通った踊の師匠だ。けれどもその名の通る

わたしは日本橋の幇間だし、かの女は柳橋の芸者である。逢曳くに何の妨げ

の名妓がいた。地方の醸造家を旦那に持ち、当時日本橋に在った魚河岸の魚問屋の若旦那を客情夫にしていて暮しに

青年で幇間をしながら私立大学に通っていた時分に、日本橋の花柳街にお品という中年の名妓がいた。地方の醸造家を

に添った。わたしはかの女に「わたしの指図だ。日本橋の橋の上で裸の大の字になりなさい」と言ったところでわたしが

も架っていれば、左側には、両国橋を越して蔵前橋の橋梁のカーヴも見えます。小名木川口の上に聳える国技館の大きな丸屋根

の前を通り過ぎて濠川に架っている小橋を渡り、明るい人形町通りへ出ました。

そういうウヰーンの服地のことや池上の言葉を、この人形町の品物を眺めて不意に思い出したのは、どこかあのウヰーンの品に

わたくしは気分がいよ／＼逸るまゝに葛岡を牽いて人形町の角を折れ、芳町の通りを日本橋川の方へ向います。ならば

、新宿でもなく、神田の神保町通りでもなく、また上野の広小路、牛込の神楽坂、麻布の十番でもなく、この東京の下町

上野のステーションへ来て調べてみますと、

それは、銀座でもなく、新宿でもなく、神田の神保町通りでもなく、また上野の広小路、牛込の神楽坂、麻布の十番で

それは、銀座でもなく、新宿でもなく、神田の神保町通りでもなく、また上野の広小路、牛込の神楽坂、麻布の十

それは、銀座でもなく、新宿でもなく、神田の神保町通りでもなく、また上野の広小路、牛込の

らは摘草をしています。右手の方に前橋、伊勢崎の煤煙も望めます。

、なつかしさにむかし新詩社の在ったとかいう九段市ヶ谷辺の町の変り方をわたくしに訊ねました。宿の主は、先生

五月の鯉幟がへんぽんと翻っていましたが、館林に来た頃は躑躅もぽつ／＼咲きかけたという噂を聞きます。

たと知らせています。わたくしは梯子段を降りて、館林で買って来た花山うどんの包を前に置き、澄まして母親に挨拶

、私たちは東武電鉄に乗って、越谷、草加、竹塚、西新井とおい／＼大都に近付いて参りますと、わたくしの血は控えても

だが、私たちは東武電鉄に乗って、越谷、草加、竹塚、西新井とおい／＼大都に近付いて参りますと、わたくしの血

だが、私たちは東武電鉄に乗って、越谷、草加、竹塚、西新井とおい／＼大都に近付いて参りますと、わたくし

を通り、橋詰の青柳を見返り、いそ／＼とさしかゝる千住の大橋、蓊※として川気の黄いろなさみだれ月のすみだ川

女を品藻してわい／＼騒いでいます。向島の漕艇の選手達でゞもあるのでしょうか、みんな立派な体格をし

なった。やり切れないこの気持でいるのにわたしはちょうど向島の三囲稲荷に献額する現代江戸派の俳諧の揮毫を頼まれて、

た暖い日で、見渡すと銀座一二丁目の華やかな建物から京橋に向う高層建築は真珠細工のように潤んで光っております。町中に

ちっとも目立ちませんが、門の中へ入ると、もとは隅田川から鴎に混って小鴨がひょこり／＼と浮いて入って来たという

は悠揚と新大橋も架っていれば、左側には、両国橋を越して蔵前橋の橋梁のカーヴも見えます。小名木川口の上に聳える

黄昏の空に太くどっしり架っている両国橋の橋影、通行整理の提灯に急き立てられ、ざら／＼履物の無数の

。向うは、安宅町河岸の倉庫、そして右手には悠揚と新大橋も架っていれば、左側には、両国橋を越して蔵前橋の橋梁

に葛岡を牽いて人形町の角を折れ、芳町の通りを日本橋川の方へ向います。ならばどしゃ降りのひと雨でもあって、これ等の

もう見物の船はすみだ川へ向け神田川を競って下っています。私たちの船も中に混ります。明治の

秩父の山中から流れ出て、東京湾に流れ入る多那川は上流で早くから山岳地帯から離れ、武蔵相模平野の中