ローマ 東京 銀座 浅草

病院の焼跡の空地があって、煉瓦塀の一側がローマの古跡のように見える。ともよと湊は持ちものを叢の上に置き、

東京の下町と山の手の境い目といったような、ひどく坂や崖の多い街

新らしい福ずしの主人は、もともと東京で屈指の鮨店で腕を仕込んだ職人だけに、周囲の状況を察し

「まさか、こんなものを下げて銀座へも出かけられんし」

「ううん、銀座なんかへ行かなくっても、どこかその辺の空地で休んで行きましょうよ

の小さい膳の上には、いつものように炒り玉子と浅草海苔が、載っていた。母親は父親が覗くとその膳を袖で

はおろおろの声である。こういう心配の揚句、玉子と浅草海苔が、この子の一ばん性に合う喰べものだということが見出され