金魚撩乱 / 岡本かの子
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ものは貧乏旗本の体のいい副業だったんだな。山の手では、この麻布の高台と赤坂高台の境にぽつりぽつりある窪地で、水の
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昭和七年の晩秋に京浜に大暴風雨があって、東京市内は坪当り三石一斗の雨量に、
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が垂れ下っている崖の上の広壮な邸園の一端にロマネスクの半円祠堂があって、一本一本の円柱は六月の陽を受け
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復一は関西での金魚の飼育地で有名な奈良大阪府県下を視察に廻った。奈良県下の郡山はわけて昔から金魚飼育の盛ん
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の中学を卒え、家畜魚類の研究に力を注いでいる関西のある湖の岸の水産所へ研究生に入ることになった。いよいよ一週間
復一が研究生として入った水産試験所は関西の大きな湖の岸にあった。Oという県庁所在地の市は夕飯後の
復一は関西での金魚の飼育地で有名な奈良大阪府県下を視察に廻った。
関西方面からの移入、桶の註文、そんな用事で、復一はなおしばらく関西に
移入、桶の註文、そんな用事で、復一はなおしばらく関西にとどまらなければならなかった。
鼎造は復一が関西からの金魚輸送の労を謝した後云った。
復一は考えた。復一は美事な蘭鋳の親魚を関西から取り寄せて、来るべき交媒の春を待った。蘭鋳は胴は稚純
それを他人事のように聞き流しながら、復一は関西から届いた蘭鋳の番いに冬越しの用意をしてやっていた。菰を
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復一は関西での金魚の飼育地で有名な奈良大阪府県下を視察に廻った。奈良県下の郡山はわけて昔から金魚飼育
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へ出る青年期までここに育ちながら、今更のように、「東京は山の手にこんな桃仙境があるのだった」と気がついた。そして
よく知っていた。鼎造の祖父に当る人がやはり東京の山の手の窪地に住み金魚をひどく嗜好したので、鼎造の幼時
そのうち復一は東京の中学を卒え、家畜魚類の研究に力を注いでいる関西のある湖
しかし、東京を離れて来て、復一が一ばん心で見直したというより、より
。真佐子をそうとばかり思っていたせいか復一は東京を離れるとき、かえってさばさばした気がした。マネキン人形さんにはお訣れ
「東京を出てからもう二年目の秋だな」
なら、はっきりお断りしときますが、どうせあたしはね。東京の磨いたお嬢さんとは全然較べものにはならない田舎の漁師の娘の
東京の被害実状が次々に報ぜられた。復一は一応東京へ帰ろうかと問い合せた。
。山の手は助ったことが判ったが、とにかく惨澹たる東京の被害実状が次々に報ぜられた。復一は一応東京へ帰ろうかと
の仮小屋の慰藉になるものは金魚以外にはない。東京の金魚業一同は踏み止まって倍層商売を建て直すことに決心した」
、鼎造から呼び戻されて、四年振りで復一は東京に帰ることが出来た。論文はついに完成しなかった。復一よりも
教授に訣れを告げて、復一は中途退学の形で東京に帰った。未完成の草稿を焼き捨てるとか、湖中へ沈めるとかいう考え
地震の翌年の春なので、東京の下町はまだ酷かったが、山の手は昔に変りはなかった。谷窪の
は思いとどまり、復一は親魚の詮索にかかった。彼は東京中の飼育商や、素人飼育家を隈なく尋ねた。覗った魚は
昭和七年の晩秋に京浜に大暴風雨があって、東京市内は坪当り三石一斗の雨量に、谷窪の大溝も溢れ出し、せっかく、
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「どう、お訣れに、銀座へでも行ってお茶を飲みません?」
「銀座なんてざわついた処より僕は榎木町の通りぐらいなら行ってもいいんです」