弟子の心 / 宮本百合子
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千葉
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、印象を書いて呉れと此雑誌社から頼まれた、千葉安良先生がある。
私が一番初め千葉先生を教壇に見たのは、四年の西洋歴史の時からであっ
ところが西洋歴史の時から、私の前に現れた千葉先生は、何処となく、その枯渇した状態とは異ったものを持っ
に待ち、楽しんだろう。私にとって学問らしい学問は、千葉先生の時間ほかなかった。僅か一時間の課業ではあったが、講義
して、私は不規則な我まま者であったが、千葉先生の時間は、一度でもおろそかにしたことはなかった。この時間
と云う学問そのものが珍しかったことは争えない。然し、千葉先生は、学問の講義のうちに、実に多くの暗示を含ませて
丁度五年頃、千葉先生は、水色メリンスの幅のひろい襷を持って居られた。その頃