正雪の二代目 / 岡本綺堂
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と云つて、隣町の三河屋さんでも、女や子供たちを川越の親類にあづけたと云ふわ。
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彌平次 (のび上る。)これはいけない。本庄の方があぶないぞ。
平九郎 なに、本庄にあやまることがあるものか。劍術の極意は相手をずば/\と斬りさ
して飛んだことを致しました。刀屋のせがれには本庄を立合はせましたが……。
伴左衞 むゝ。本庄を又出すわけにも行くまいから、三上を出せ。あいつは口ばかりで、
伴左衞 本庄のいふ通り、やつぱり品川の方が居心がいゝやうだ。吉原で寒さ
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の云ひなり次第に、先づ神奈川の港を開く。つゞいて江戸に公使館や領事館を置いて、わが神國を夷狄に蹈みにじらせるとは
叱つ、大きな聲をしてはならない。そこで先づ江戸にある異人館を一度に燒き拂つて、それから水陸二手に分かれ、陸をゆく
、笑ふどころではござらぬ。徳川の膝元といふこの江戸にも、御貴殿のごとき忠勇義烈の御仁が隱れてござるかと思へば、
時助 ちげえねえ。江戸の煤はきは權現樣以來、十三日にきまつてゐますと云つて
では日本人のほんたうの腕前をみせるわけには行かない。江戸の異人館なんぞを燒いたところで、多寡が知れてゐる。横濱にある異人館を
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揃つた腰ぬけばかりで、相手の云ひなり次第に、先づ神奈川の港を開く。つゞいて江戸に公使館や領事館を置いて、わが神國を
伴左衞 むゝ。神奈川の同志の者から密書が來た。京都からも來てゐる。すぐにその
お千代 (まだ不審らしく。)あの、神奈川と京都から早飛脚が……。
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おかめ 八丁堀のお役人のやうだつたよ。
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伴左衞 (いよ/\驚く。)あの、御殿山の異人館へ夜撃を企てらるゝと……。(わざと落付いて。)それ
つたものだ。黒船は押寄せて來ねえにしても、御殿山のやうな一件があるからな。
に近いので、ふだんから黒船を恐れてゐるところへ、御殿山の燒撃騷ぎが始まつたので、いよ/\怯氣が付いて、急
限らない。いや、屹と始まるに相違ない。このあひだの御殿山の燒撃どころぢやあない。(得意らしく笑ふ。)もつと度偉い騷ぎが
も云へないもので、あれから四五日過ぎると、ほんたうに御殿山の異人館に火をつけた奴があつたには少し驚きました。
義平 このあひだの晩、御殿山の異人館へ火をつけたのは先生達の仕業と睨んでゐるとみえまし
伴左衞 このあひだの晩、御殿山へ火をつけたのは、おれたちの仕業と睨まれてゐるらしいのだ
伴左衞 御殿山の一件は勿論おぼえの無いことで、その申開きは立つ筈だが、困
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むゝ。神奈川の同志の者から密書が來た。京都からも來てゐる。すぐにその返事をかいて江戸表の形勢をく
お千代 (まだ不審らしく。)あの、神奈川と京都から早飛脚が……。
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甚作 先日品川でお目にかゝつた中國の藩士、山杉甚作源の頼經で
んぞ。いや、拙者ばかりでない。御貴殿たちが先日品川で豪遊をきはめて居られたのも、おなじく英氣を養ふ爲でござら
に醒めました。(形をあらためる。)さて先生。先日品川の妓樓で初めてお目にかゝつた時には、拙者も大醉
なれど、唯今は浪人の身の上、攘夷の手はじめとして品川御殿山にある異人館を燒撃いたす覺悟でござる。
て、よし原の方へ乘り出さうではございませんか。品川へは兎角にさういふ亂暴ものが入り込んで、とんだ係り合ひになります
伴左衞 そればかりでなく、品川は眼と鼻のあひだで、どうも近所の噂になり易いからな
おきん こゝらは品川の海に近いから、山の手の遠いところへ引越すと云つてゐてよ。
そんな話をちよいと聞いたが……。(笑ふ。)品川の近所が怖いさうだ。こゝらは海に近いので、ふだんから黒船
。)併し先生は深堀さんやお弟子たちを連れて、品川や吉原で毎晩のやうに全盛遊びをしてゐると云ふぢやあありません
新吾 やつぱり遊び馴れたせゐか、吉原よりは品川の方が居心がいゝやうでございます。
寒さうな冬がれの田圃をながめてゐるよりも、品川の廣い海を見晴らした方が、どうも清々して氣分がはつきり
伴左衞 本庄のいふ通り、やつぱり品川の方が居心がいゝやうだ。吉原で寒さうな冬がれの
たちを代る/″\に引き連れて、三日にあげず品川や吉原へお乘り出しになるのは、どう云ふお心得でございます。