能登 越前 江戸 加賀 鎌倉

たのです――は私をつれて、越前から加賀、能登、越中、越後を経て、上州路からお江戸へ出まして……。

あるので、叔父は反対の方角にむかって、山越しに越前の国へ出ようと企てた。その途中の嶮しいのはもちろん覚悟の上である。およそ

「わたしが十一のときに、やはり大垣から越前を越えてゆくという旅の出家が一夜の宿をかりました。その出家

お弟子になったのです――は私をつれて、越前から加賀、能登、越中、越後を経て、上州路からお江戸へ出まし

「三度も江戸へお下りになったのでございますか。」

になったのです――は私をつれて、越前から加賀、能登、越中、越後を経て、上州路からお江戸へ出まして…

「はい。しばらく鎌倉におりましたので……。」と、僧はむかしを偲び顔に答え

「では、鎌倉へは御修業にお出でなされたのでございますか。」

ならなければならぬ運命があらわれている。わたしと一緒に鎌倉へ行って、仏門の修業をやる気はないかと言われたのでござります

で世間の恋しい時でもあり、かねて名を聞いている鎌倉というところへ行ってみたさに、その出家に連れて行ってもらうこと

のでした。あとで知ったのですが、その出家は鎌倉でも五山の一つという名高い寺のお住持で、京登りをした

お江戸を見物しまして、七日あまり逗留の後に鎌倉へ帰り着きました。それからその寺で足掛け十六年、わたしが二十六の年まで

言い振りといい、決して愚かな人物とはみえない。しかも鎌倉の名刹で十六年の修業を積みながら、たとい故郷とはいえ、若い身空で

で、唯今ではここにお住居でございますか。再び鎌倉へお戻りにならないのでございますか。」

年、五年、十年……。あるいは一生……。鎌倉はおろか、他国の土を踏むことも出来ぬかも知れませぬ。」

去ったのでござります。なにしろこんな辺鄙なところですから、鎌倉への交通などは容易に出来るものではなく、父からは何の便りも

「あの御出家はどういう人ですね。以前は鎌倉のお寺で修業したというお話でしたが……。」

「鎌倉の大きいお寺で十六年も修業して、相当の一ヵ寺の住職にも

て、家内の人々とも親しくなった。総領の源蔵は鎌倉へ修業に出てしまったので、男手の少ない源兵衛の家ではこの黒ん坊

「源蔵は鎌倉へ行ってしまって、もうここへは戻って来ないだろう。娘が年頃に

の死んだとき、女房の死んだとき、源兵衛はそれを鎌倉へ通知してやらなかったらしいが、こうして一家が全滅してしまった

のはよろしくあるまいというので、村の人々から初めて鎌倉へ知らせてやると、せがれの源蔵は早々に戻って来た。