停車場の少女 ――「近代異妖編」 / 岡本綺堂
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空地に出て、だん/\に青い姿をあらはしてゆく箱根の山々を眺めてゐました。
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わたくしの宅へおいでになりまして、明後日の日曜日に湯河原へ行かないかと誘つて下すつたのでございます。継子さんの阿兄さん
それでも負傷はすつかり癒つて二月のはじめ頃から湯河原へ転地してゐるので、学校の試験休みのあひだに一度お見舞に行き
まだ東京駅はございませんでした。継子さんは熱海へも湯河原へも旅行した経験があるので、わたくしは唯おとなしくお供をして行け
を楽ませたか知れません。国府津から小田原、小田原から湯河原、そのあひだも二人は絶えず海や山に眼を奪はれてゐまし
な心持でそこに突つ立つてゐました。これから湯河原へ引返して見ようかとも思ひました。それもなんだか馬鹿らしいやうに
ました。このまゝ真直に東京へ帰らうか、それとも湯河原へ引返さうかと、わたくしは色々にかんがへてゐましたが、どう
なると次の列車を待つてはゐられません。わたくしは湯河原へ引返すことにして、再び小田原行の電車に乗りました。
「まあ、驚くぢやございませんか。それから湯河原へ引返しますと、継子さんはほんたうに死んでゐるのです。」
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とも改めて打合せた上で、日曜日の午前の汽車で、新橋を発ちました。御承知の通り、その頃はまだ東京駅はございませんでし
殊にその日は三月下旬の長閑な日で、新橋を出ると、もうすぐに汽車の窓から春の海が広々とながめられ
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「どうです。わたしの帰るまで逗留して、一緒に東京へ帰りませんか。」などと、不二雄さんは笑つて云ひました
十二時何分かの東京行列車を待合せるために、わたくしは狭い二等待合室に這入つて、テーブル
筈が無いと思はれましたので、わたくしは思ひ切つて東京へ帰ることに決めました。
だか馬鹿らしいやうにも思ひました。このまゝ真直に東京へ帰らうか、それとも湯河原へ引返さうかと、わたくしは色々にかん
乗らうとして又俄に躊躇しました。まつすぐに東京へ帰ると決心してゐながら、いざ乗込むといふ場合になると、不思議
その中に東京行の列車が着きましたので、ほかの人達はみんな乗込みました
が教へてくれなかつたら、わたくしは何にも知らずに東京へ帰つてしまつたでせう。ねえ、さうでせう。」
、雨のために既う一日逗留するといふ電報を東京の家へ送つたさうです。さうして、食卓にむかつて手紙をかき