半七捕物帳 01 お文の魂 / 岡本綺堂
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Kのをぢさんは音羽の堺屋へ出向いて、女の奉公人の出入帳を調べた。代々の出入先
二人は音羽の田島屋へ行つた。をぢさんの屋敷へも出入りをするので、
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その頃この番町に松村彦太郎といふ三百石の旗本が屋敷を持つてゐた。松村は相當
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と相談した。旗本に限らず、御家人に限らず、江戸の侍の次三男などと言ふものは、概して無役の閑人であつた。長男
から奉公に出て來るのが例で、ほかの一人は江戸の請宿から隨意に雇つてゐることが判つた。請宿は音羽
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立つて歩いた。二人は安藤坂をのぼつて、本郷から下谷の池の端へ出た。けふは朝から些つとも風のない日で
をぢさんは歸途に本郷の友達の家に寄ると、友達は自分の識つてゐる踊の師匠の大浚
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或機會から、この半七老人と懇意になつて、赤坂の隱居所へたびたび遊びに行くやうになつた。老人はなかなか贅澤で、上等
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「わたしが丁度二十歳の時だから、元治元年――京都では蛤御門の戰があつた年のことだと思へ。」と
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「下谷の淨圓寺だ。」
いゝえ、まだそればかりぢやありますまい。まあ、これから下谷へ行つて御覽なさい。」
歩いた。二人は安藤坂をのぼつて、本郷から下谷の池の端へ出た。けふは朝から些つとも風のない日で、
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した。その日は半七に別れて、をぢさんは深川の某所に開かれる發句の運座に行つた。
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用人の五左衞門も心配して、あくる日は市ヶ谷で有名な賣卜者をたづねた。賣卜者は屋敷の西にある大きい椿
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かれは神田の半七といふ岡つ引で、その妹は神田の明神下で常盤津の師匠をしてゐる。Kのをぢさんは
が、彼の細長い顔の著しい特徴であつた。かれは神田の半七といふ岡つ引で、その妹は神田の明神下で常盤津