壇ノ浦 九州 大阪 熊本 福岡 東京 隅田川

昔、平家の美しい官女が壇ノ浦から落ちのびて、この村まで遠く迷ってくると、ひどく疲れて喉が渇いた

僕の郷里は九州で、かの不知火の名所に近いところだ。僕の生れた町には川らしい

眼をおとしていた。僕は汽車のなかで買った大阪の新聞や地方新聞などを読んでいるうちに、馬車は停車場から町のまん中を

若い男は僕の町の薬屋のせがれで、福岡か熊本あたりで薬剤師の免状を取って来て、自分の店で調剤もして

初めて妹の居どころが判ったのですが……。妹は熊本に近いある町の料理屋へ酌婦に住み込んでいたのです。わたくしはすぐ

若い男は僕の町の薬屋のせがれで、福岡か熊本あたりで薬剤師の免状を取って来て、自分の店で調剤も

のいないあいだに市野さんは自分の家を出て、福岡とかの薬学校へはいってしまったということで、わたくしも実に

をして、それは定めてお困りだろう。実はわたしも福岡まで行くのだから、一緒に切符を買ってあげようといって、わたくしを

十五のわたくしですから、うっかり相手に釣り込まれて、これから福岡まで行きたいのだが汽車賃をわすれて来たという話をすると

に恋しくなって、もう矢も楯もたまらなくなってとうとう福岡まで市野さんをたずねて行く気になったんです。飛んだ朝顔ですね

に停まって、その男がここで降りるのだという。福岡にしては何だか近過ぎるようだと思いながら、そのまま一緒に

もう仕方がありません。福岡というのは嘘で、福岡まではまだ半分も行かない途中の小さい町で、ここも案の通りの

で、あっと思いましたがもう仕方がありません。福岡というのは嘘で、福岡まではまだ半分も行かない途中の小さい町

そのころ僕は東京に出ていたのだが、その年にかぎって学校の夏休みを過ぎ

東京の人たちは地方の事情をよく御存知あるまいが、僕たちの学生時代に

らの草のなかには虫の声が一面にきこえる。東京はまだ土用が明けたばかりであろうが、ここらは南の国といっ

市野を知っていると正直に答えた。しかし自分は近年東京に出ていて、彼と一年に一度会うぐらいのことであるから

長い川だが、川幅は約二十間で、まず隅田川の四分の一ぐらいだろう。むかしから堤が低く、地面と水との