江戸 本郷 谷中 大仙寺 奥州 根津 駒込 向島 上野

何かの事で浪人して、七、八年前から江戸へ出て来て、親子ふたりでここに店借りをしていました。宗右衛門

共もたびたび見に行ったことがあります。その頃は江戸ももう末で、世の中がだんだんに騒がしくなって来たものですから、町人で

―文久二年でございます。その頃、わたくしの家は本郷の千駄木坂下町、どなたも御存じの菊人形で名高い団子坂の下で、小さな酒屋を

呼ばれてかえる途中、丁度その時刻に坂下町を通りかかると、谷中の方角から十歳か十一ぐらいの女の子が長い振袖を着て、折りからの

の若い者がこんなことを聞き出してきました。三崎町の大仙寺というお寺の納所が檀家の法要に呼ばれてかえる途中、丁度その時刻

「大仙寺の納所が見たという、年のころは十歳か十一で長い振袖を

大仙寺の納所がその晩に怪しい女の子を見たというので、これも寺社方

いう浪人のお武家が住んでいました。なんでも奥州の白河とか二本松とかの藩中であったそうですが、何かの

そうでございます。今日とは違いまして、その頃の根津や駒込辺は随分さびしい所で、わたくし共の住んでいる坂下町には、小笠原

ございます。今日とは違いまして、その頃の根津や駒込辺は随分さびしい所で、わたくし共の住んでいる坂下町には、小笠原様

遠慮して上野のお花見には出ませんでした。向島にはお武家の乱暴が流行りまして、酔ったまぎれに抜身を振りまわす者

わけでもありませんでしたが、大抵は遠慮して上野のお花見には出ませんでした。向島にはお武家の乱暴が

、わたくし共の近所まで焼けて来ました。その春から上野の中堂が大修繕の工事に取りかかりましたので、お花見差止めという