半七捕物帳 02 石灯籠 / 岡本綺堂
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を書こうとも思われなかった。菊村の遠縁の親類が本郷にあるので、所詮無駄とは思いながらも、一応は念晴らしにこれから其処
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知恵も分別も出ませんでした」と、お菊は江戸へ帰ってから係り役人の取り調べに答えた。
と軽業師ということを思い付いたんです。女の軽業師は江戸にもたくさんありません。そのなかでも両国の小屋に出ている春風小柳
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早く埒が明いてしまったんです。金次という奴は伊豆の島へやられたんですが、その後なんでも赦に逢って無事
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ある。娘と番頭は前から打ち合わせがしてあって、奥山の茶屋か何かで逢ったろう。どうだ」
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半七の報告を聴いて、親分の吉五郎は金杉の浜で鯨をつかまえたほどに驚いた。
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園第六区を更に不秩序に、更に幾倍も混雑させたような両国の広小路に向った。
もうかれこれ午頃で、広小路の芝居や寄席も、向う両国の見世物小屋も、これからそろそろ囃し立てようとする時刻であった。むし
「そう、そう。金次といったっけ。あいつの家は向う両国だね。小柳も一緒にいるんだろう」
ばらく舞台を見つめていたが、やがて又ここを出て向う両国へ渡った。
物馴れた手先ふたりが半七を先に立てて再び両国へむかったのは、短い冬の日ももう暮れかかって、見世物小屋がちょうど閉
の軽業師は江戸にもたくさんありません。そのなかでも両国の小屋に出ている春風小柳という奴はふだんから評判のよくない女で、自分
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半七は岡っ引の子ではなかった。日本橋の木綿店の通い番頭のせがれに生まれて、彼が十三、妹のお
近づいた十二月はじめの陰った日であった。半七が日本橋の大通りをぶらぶらあるいていると、白木の横町から蒼い顔をした若い
出て来ました。それを小柳が見て、あれは日本橋の菊村の娘だ。おとなしいような顔をしていながら、こんなところで
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味をおぼえた彼は、とうとう自分の家を飛び出して、神田の吉五郎という岡っ引の子分になった。吉五郎は酒癖のよくない男で
半七は神田へ帰って親分にこの話をすると、吉五郎は首をかしげて、その
「やあ、神田の大哥ですか。お珍らしゅうございますね。まあお上がんなさい」
「じゃあ気の毒だが、すぐに神田の親分の所まで一緒に来てくれ。どの道、当分は娑婆は見られ
「わたしは神田の吉五郎のところから来たが、親分がなにか用があると云うから
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「きのうのお午すぎに仲働きのお竹どんを連れて、浅草の観音様へお詣りに行ったんですが、途中でお菊さんに
「一昨日浅草へ行った時に、娘はどこかで清さんに逢やあしなかった
考えたか、すぐに菊村の店を出て、現代の浅草公園第六区を更に不秩序に、更に幾倍も混雑させたよう
た。「実はさきおとといの午まえに、小柳と二人で浅草へ遊びに行ったんです。酔うとあいつの癖で、きょうはもう商売
向う河岸の百本杭に、女の髪がその昔の浅草海苔のように黒くからみついているのを発見した。引き揚げて見ると、
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三人に囲まれて、小柳は両国橋を渡った。彼女はときどきに肩をふるわせて、遣る瀬ないように啜り泣き