江戸 四谷 四谷坂町 新宿 信濃町

その悪智慧も大抵はおなじやうに働くのであらう。わが江戸の話は文政末期の秋の宵の出来事である。四谷の大木戸手前に三河屋

江戸の話は文政末期の秋の宵の出来事である。四谷の大木戸手前に三河屋といふ小さい両替店があつて、主人新兵衛夫婦と、せがれ

ので、手先は猶予なしに彼を取押へた。四谷坂町に住んでゐる三上甚五郎もつゞいて引挙げられた。

あらうと鑑定したのである。その鑑定は適中して新宿の伊賀屋といふ店へ登楼した一人の客が右の小指に火傷を

をつけた。彼等はおそらく其金を分配して、新宿の妓楼に足を入れたであらうと鑑定したのである。その鑑定

に蛇の道は蛇で、手先等は、先づ近所の新宿に眼をつけた。彼等はおそらく其金を分配して、新宿の

が、二人はそれを山分けにして別れた。一緒に新宿へ遊びに行つては、足が附く虞れがあると思つたからである。

た。そのときは差のみにも感じなかつたが、新宿へ行つてからは其の小指がひり／＼と痛んで来たので、

その客はおせんの馴染で、四谷信濃町に住んでゐる三十俵取りの國原次郎といふ者である。その晩は