半七捕物帳 57 幽霊の観世物 / 岡本綺堂
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「もういい。これから八丁堀へ行って、きょうの顛末を旦那に話して、それぞれに手配りをしなけりゃあ
子分ふたりに途中で別れて、半七は八丁堀へむかった。
番屋に残っています。なにしろ人殺しというのですから、八丁堀の旦那も出て来る筈です。住吉町の親分も来ていました」
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それから四、五日の後、わたしも老人を赤坂の宅へ中元の礼ながらにたずねてゆくと、銀座の縁日の話から観世
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店をのぞきに来たりするそうです。わっしも念のために両国へまわって、飲みたくもねえ茶を飲んで来ましたが、そのお米という女は若
「いや、これにも女の係り合いがあるようです。両国の列び茶屋にいるお米という女、これがおかしいという噂で、時々に駿河屋
井三之助と申します」と、幽霊は細い声で答えた。彼は両国の百日芝居の女形であった。
あ、駿河屋で何か建て増しをするので、その相談ながら両国辺でいっしょに飲んで、駿河屋の主人を照降町まで送って帰る途中だという
「向う両国の大工だそうです。本人が番屋で申し立てたのじゃあ、駿河屋で何か建て増
面白くないから、幾らかお半に面当てのような気味で、両国の列び茶屋などへ遊びに行って、お米という女と関係が出来てしまった。そ
けは早くも姿を隠しました。それから七、八年の後に、両国辺の人たちが大山参りに出かけると、その途中の達磨茶屋のような店で、お
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下谷通新町の長助という若い大工が例の景品をせしめる料簡で、勇気を
行くと、そこでちっとばかり家作の手入れをするので、下谷通新町の長助という大工が来ていました。だんだん訊いてみると
ような商売の者はねえか、気をつけてくれ。下谷の長助も大工だが、あいつじゃねえ」
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墓まいりに出て行く。浅草の観音へも参詣に行く。深川の八幡へもお参りをする。それはまあ信心だから仕方がねえと
が出這入りをしちゃあ、すぐに近所の眼に付くから、深川の八幡前の音造の叔母というのが小さい荒物屋をしている。そこ
はよんどころなく……。というのは、お半と信次郎が深川の八幡さまへ参詣に行って、そこらの小料理屋へはいり込むと、丁度に
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(例)日本橋材木町
死んだ女は日本橋材木町、俗に杉の森新道というところに住んでいるお半と
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の新聞社に勤めていたので、社から帰る途中、銀座の地蔵の縁日をひやかして歩いた。電車のまだ開通しない時代である
暑い宵であったと記憶している。そのころ私は銀座の新聞社に勤めていたので、社から帰る途中、銀座の地蔵の
を赤坂の宅へ中元の礼ながらにたずねてゆくと、銀座の縁日の話から観世物の噂が出た。ろくろ首の話も出た
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その頃、浅草、仁王門のそばに、例の幽霊の観世物小屋が出来ました。これ
お半は変死の当日、浅草観音へ参詣すると云って、朝の四ツ(午前十時)頃に
これは浅草寺内の出来事であるから、寺社奉行の係りである。それが他殺で
店の若い者一人が小僧を連れて、あても無しに浅草観音の方角へ探しに出た。
。その当日、駿河屋の養子の信次郎も、商売用で浅草の花川戸まで出向いた。その帰り路で、幽霊の観世物小屋で見物の女
来ていました。だんだん訊いてみると、その大工は浅草の幽霊の観世物小屋で、照降町の駿河屋の女隠居が死んでいる
、隠居のお半は毎月かならず先代の墓まいりに出て行く。浅草の観音へも参詣に行く。深川の八幡へもお参りをする。それは
「今そこで松に逢いましたら、これから浅草のお化けへ出かけるそうで……」
「おととい私の内の松吉がおまえさんに逢って、浅草の話を聴いたそうだが……」
「きのうも仕事を休んで浅草へ行ったろう」と、半七は畳みかけて云った。「そうして幽霊の
その足で更に浅草へ廻ろうかと思ったが、ともかくも松吉や善八の報告を待つことに
その報告によると、浅草の観世物小屋では、当日お半の来る前は客足がしばらく途切れて
識られているから拙い。善八、おめえは亀を誘って浅草へ行って、観世物小屋の裏手へ廻って、右と左の出口を
た。二人の出逢い場所はふだんから決まっているので、浅草辺の小料理屋の二階で午過ぎまで遊び暮らして、それから仁王門前の観世物
お半は観音へ参詣すると云い、途中で落ち合って一緒に浅草へ出かけました。二人の出逢い場所はふだんから決まっているので、浅草
どうしてお半を片付けようかと狙っていると、かの浅草の観世物の評判が高い。そこへ引っ張り込んで殺すという計略、それ
半の帰りが遅いと云うので、店の若い者を浅草へ出してやる。そのあとで信次郎は、観世物小屋で女の見物人が
じゃあ無いかと思われます。そうなると、信次郎も当日浅草へ行ったというのが、いよいよ怪しく思われないでもありません。
ているのは変だと思いましたら、案の通り、浅草の観世物小屋へ因縁を付けに行って、幾らか貰って来たん
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ようです。もうちっと涼しくなったら起きられましょう。実はきのう千住の掃部宿の質屋に用があって出かけて行くと、そこでちっとばかり家作
、三日のうちでも取り分けて涼しい日であった。千住の宿を通りぬけて、長い大橋を渡ってゆくと、荒川の秋の水
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ない。まずその手続きを済ませた上で、半七は更に北千住の掃部宿へむかった。
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や善八の報告を待つことにして、半七はそのまま神田へ帰った。
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いうのですから、八丁堀の旦那も出て来る筈です。住吉町の親分も来ていました」
ここらは住吉町の竜蔵の縄張り内である。その竜蔵が顔を出した上は、
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したような気味で、あわてて挨拶した。老人は京橋辺の知人のところへ中元の礼に行った帰り路だとか云うことで