半七捕物帳 28 雪達磨 / 岡本綺堂
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的興味以外に、これらの物語の背景をなしている江戸のおもかげの幾分をうかがい得られるという点にあらねばならない。わたしも
文久元年の冬には、江戸に一度も雪が降らなかった。冬じゅうに少しも雪を見ないという
いうのは、殆ど前代未聞の奇蹟であるかのように、江戸の人々が不思議がって云いはやしていると、その埋め合わせというのか、あくる
、この雪は三尺も積ったと伝えられている。江戸で三尺の雪――それは余ほど割引きをして聞かなければならない
の多量であったことは想像するに難くない。少なくとも江戸に於いては、近年未曾有の大雪であったに相違ない。
それほどの大雪にうずめられている間に、のん気な江戸の人達は、たとい回礼に出ることを怠っても、雪達磨をこしらえることを
で、さのみ見苦しからぬ服装をしていたが、江戸の人間でないことはすぐに覚られた。男の死骸は辻番から更に近所
ことがある。一体この甚右衛門という男はなんの用で江戸へ来ていたのか、おまえ達はなんにも知らねえか」
贋金は専ら一分金と二分金とで、それを江戸でばかり遣っていると発覚の早いおそれがあるので、甚右衛門は田舎者に化け
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ものを調べた。その結果、おなじ職人の源次と勝五郎、四谷の酒屋播磨屋伝兵衛、青山の下駄屋石坂屋由兵衛、神田の鉄物屋近江屋九郎右衛門、
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黒い眼玉ばかりを形見に残して、かれらの白いかげは大江戸の巷から一つ一つ消えて行った。
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結果、おなじ職人の源次と勝五郎、四谷の酒屋播磨屋伝兵衛、青山の下駄屋石坂屋由兵衛、神田の鉄物屋近江屋九郎右衛門、麻布の米屋千倉屋長十郎
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をしばしば聴いた。それは岡っ引の半七が自分の縄張りの神田以外に踏み出して働くことである。岡っ引にはめいめいの持ち場がある。それ
「じゃあ、気の毒だが神田まで来てくれ。なに、決して迷惑はかけねえから」
顔をしている番頭を引っ張り出して、半七は彼を神田の自身番へ連れて行った。番頭はその死骸を見せられて、たしかに
、四谷の酒屋播磨屋伝兵衛、青山の下駄屋石坂屋由兵衛、神田の鉄物屋近江屋九郎右衛門、麻布の米屋千倉屋長十郎の六人を召し捕って、
のところへそんな事を云って来るのは間違っている。神田の近江屋か石坂屋へ行け」と、かれは情なく跳ねつけた。
でやろうということになって、二人は雪のなかを神田の鉄物屋まで出向いて行った。
が執拗く口説くので、甚右衛門も持て余したらしく、そんなら神田の近江屋へ行っておれが一緒に頼んでやろうということになって、
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あった。その隣り町に菊一という小間物屋があって、麹町の大通りの菊一と共に、下町では有名な老舗として知られ
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半七はそれから日本橋の馬喰町へ行った。死骸の服装からかんがえて、まず馬喰町の宿屋を一応
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で、この頃はふところ都合もよろしいようで、十一月には品川のお政という女郎をうけ出して、仲よく暮らして居ります」
「いくら品川でも女ひとりを請け出すには纒まった金がいる。多寡が錺職人
てめえはいい女房を持っているな。あの女は幾らで品川から連れてきた。その金はどこで都合して来た。てめえ達
豊吉が品川から連れてきたお政という女は、もう年明け前でもあったが
ているので、豊吉もさすがに躊躇した。よんどころなく品川の方へは泣きを入れて、七草の過ぎるまで待って貰うことにし