薬前薬後 / 岡本綺堂
地名一覧
四谷
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長く住んでいるので、秋の宵などには散歩ながら四谷の停車場へ出て行く。この停車場は大でもなく小でもなく、わたし
半蔵門
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庭をながめることもある。わたしが現在住んでいるのは半蔵門に近いバラック建の二階家で、家も小さいが庭は更に小さく、わずか
東海道五十三次
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窓にも虫の声々が近く流れ込んで来ることもある。東海道五十三次をかいた広重が今生きていたらば、こうした駅々の停車場の姿を
巴里
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を考えた。それに付けて思い出されるのは、わたしが巴里に滞在していた頃、夏のあかつきの深い靄が一面に鎖して
麹町
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わたしの現在の住宅は、麹町通りの電車道に平行した北側の裏通りに面しているので、朝
聴いているうちに、私の眼のさきには昔の麹町のすがたが浮び出した。そこには勿論自動車などは通らなかった。電車
てゆく。その寂しいような心持もまたわるくない。わたしは麹町に長く住んでいるので、秋の宵などには散歩ながら四谷の停車場
神田
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から水蜜桃や梨などの果物の籠を満載して、神田の青物市場へ送って行くので、この時刻に積荷を運び込むと、あたかも
東京
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おなじ果物を運びながらも、東京の馬力では詩趣もない、詩情も起らない。いたずらに人の神経を
となっているが、この頃では秋になっても東京の空を渡る雁の影も稀になった。まして往来のまん中に突っ立っ
交通機関であるからといって、停車場の風致までを生半可な東京風などに作ろうとするのは考えものである。