本郷 満洲 東京 千住 北千住

「わたし達の子供のときには、本郷の××町に住んでいて、すぐ近所に鰻屋がありました。店先

一年志願兵の少尉で出征しまして、負傷のために満洲の戦地から後送されて、ここの温泉で療養中でありましたので、

をへだてた向う岸の山々は青葉に埋められていた。東京ではさほどにも思わない馬酔木の若葉の紅く美しいのが、わたしの目

わたくし共はそれから無事に東京へ帰りました。両親や妹にむかって、松島さんのことやＵの

。わたくしは途方に暮れてしまいまして、ともかくも電報で東京へ知らせてやりますと、父もおどろいて駈け付けました。兄の

東京から来た人たちもいろいろに手を尽くして捜索に努めてくれました

わたくしは夢のような心持で東京へ帰りました。

からどうしたか判りませんが、もうこうなっては東京へも帰られず、けっきょく自暴自棄になって、自分の好むがままに生活

寺まで出かけまして、その帰り途に三、四人連れで千住の通りを来かかると、路ばたの鰻屋の店先で鰻を割いている男が

生活することに決心したのであろうと思われます。千住のうなぎ屋へ姿をあらわすまで丸二年半の間、どこを流れ渡ってい

いたように思われます。秋夫は片眼になって、千住のうなぎ屋の職人になって、印半纏を着て働いていたという

「実はきょうの午後に、よんどころない葬式があって北千住の寺まで出かけまして、その帰り途に三、四人連れで千住の通り

、松島さんと二台の人車をつらねて、すぐに北千住へ出向きました。

とも限らない。こう思って、その後も毎月一度ずつは北千住の鰻屋へ聞合せに行きましたが、片眼の職人は遂にその姿を見せ

北千住を立去ってから半年過ぎた後に、なぜ突然にこんな手紙をよこしたの