鳥辺山心中 / 岡本綺堂

鳥辺山心中のword cloud

地名一覧

六条

地名をクリックすると地図が表示されます

お染も自分の身の上を男に打明けた。自分は六条に住んでいる与兵衛という米屋の娘で、商売の手違いから父母はことし十五

かを探しに出た。折りからの時雨に湿れながらまず六条の柳町をたずねると、そこには兄の姿が見付からなかった。それからまた

江戸

地名をクリックすると地図が表示されます

、彼女の弱い魂をおびやかしたのは、今夜の客が江戸の侍ということであった。どなたも江戸のお侍さまじゃ、疎※

の客が江戸の侍ということであった。どなたも江戸のお侍さまじゃ、疎※があってはならぬぞと、彼女は主人

この時代には引きつづいて江戸の将軍の上洛があった。元和九年には二代将軍秀忠が上洛し

はすこぶる目ざましいものであったが、今度の寛永の上洛は江戸の威勢がその後一年ごとに著るしく加わってゆくのを証拠立てるように

具して乗り込んで来たのであるから、京の都は江戸の侍で埋められた。将軍のお供とはいうものの、参内その他の

慕って京の女をあさった。したがって京の町は江戸の侍で繁昌した。取り分けて色をあきなう巷は夜も昼も押し合うよう

の勤め振りをやかましくいう。ことに相手の客が大切な江戸の侍とあっては、なおさらその勤め振りに就いて主人がいろいろの注意をあたえる

には、どうしていいかちっとも見当がつかなかった。江戸の侍の機嫌を損じると店の商売にかかわるばかりか、どんな咎めを受けるか

ので、男の容形はよく判らなかったが、それが江戸の侍であることは、強いはっきりした関東弁で知られた。お染

「江戸のお客さまを粗末にしたとて……」

江戸の侍に嘘はなかった。半九郎はあくる日からお染を揚げ詰めにし

末か、十月の初めには将軍が京を立って江戸へ帰る――それは前から知れ切ったことであったが、その期日が

もかねて知っていた。まして将軍家の供をして、江戸の侍が江戸へ帰るのは当然のことである。彼女は自分を振り捨てて

いた。まして将軍家の供をして、江戸の侍が江戸へ帰るのは当然のことである。彼女は自分を振り捨ててゆく男を微塵

覚ったらしくうなずいた。「うむ。して、その鶯を江戸へ連れて行くのか」

興に過ぎぬ。一羽の鳥になずんでは悪い。江戸へ帰ればまた江戸の鶯がある」

一羽の鳥になずんでは悪い。江戸へ帰ればまた江戸の鶯がある」

「勿論、おれもその鶯を江戸まで持って帰ろうとは思わぬが、鳴く音が余りに哀れに聞えるので

江戸に沢山の親類や縁者をもっていない半九郎は守り符や土産などを

お前も粋にならしゃんせ。もう近いうちにお下りなら、江戸への土産によい女郎衆をお世話しよ。京の女郎と大仏餅とは

を腐らせた悪い友達に、何の科で詫びようか。江戸の侍の面汚しめ。そっちから詫びをせねば堪忍ならぬわ」

「なに、おのれはこの半九郎を江戸の侍の面汚しと言うたな。その子細を申せ」

自分の襦袢の袖を引き裂いた。冷たい鴨川の水は、江戸の男の袖にひたされて、京の女の紅い唇へ注ぎ込まれた。

間は身持ちをつつしみ、都の人に笑わるるなと、江戸を発つ時に支配頭から厳しく申渡されてある。その戒めを破って色里へ

清水寺

地名をクリックすると地図が表示されます

初冬の夜もしだいに更けて、清水寺の九つ(午後十二時)の鐘の音が水にひびいた。半九郎

五条

地名をクリックすると地図が表示されます

た。十三夜は月が冴えていた。半九郎は五条に近い宿を出て、いつものように祇園へ足を向けてゆくと、

祇園

地名をクリックすると地図が表示されます

られているのは六条柳町の遊女屋ばかりで、その他の祇園、西石垣、縄手、五条坂、北野のたぐいは、すべて無免許の隠し売女であっ

問題に対しては余り多くの注意を払わなかったらしく、祇園その他の売女はますますその数を増して、それぞれに立派な色町を作って

、源三郎は苦々しそうに言った。「今夜もきっと柳町か祇園であろうよ」

源三郎は半九郎の顔をじっと見た。半九郎がこのごろ祇園に入りびたっていることを彼も薄々知っていた。ことに今の口振りで、

兄の姿が見付からなかった。それからまた方角を変えて祇園へ来て、ようようその居どころを突きとめると、兄は女の膝枕で他愛なく眠っ

京都

地名をクリックすると地図が表示されます

も薄れてゆく憂いがあるので、柳町の者どもは京都所司代にしばしば願書をささげて、隠し売女の取締りを訴えたが、名奉行