大阪 東京

道子がやっと女専を卒業して、大阪の喜美子のもとへ帰って来たのは、やがてアパートの中庭に桜の花

あろうと、道子は一応考えたが、しかしひょっとして同じ大阪から受験した女の人の中に自分とよく似た名の田村道子と

に、あ、そうだわと、道子は思い当った。当時大阪の高等学校の生徒であったその青年は、高等学校を卒業して東京の大学へ

のは、それから一週間のちのことであった。早朝大阪を発ち、東京駅に着いたのは、もう黄昏刻であった。

三年経てば、妹の道子は東京の女子専門学校を卒業する、乾いた雑布を絞るような学資の仕送りの苦し

あれへん。私かて働くわ。」という道子を無理矢理東京の女子専門学校の寄宿舎へ入れ、そして自分は生国魂神社の近くにあった

三年の間に道子はすっかり東京言葉になっていた。喜美子はうれしさに胸が温まって、暫らく口も

東京にいたからその点は大丈夫だと、道子はわざわざ東京の学校へ入れてくれた姉の心づくしが今更のように思い出された。

は標準語が話せなくてはならない、しかし自分は三年間東京にいたからその点は大丈夫だと、道子はわざわざ東京の学校へ入れ

高等学校の生徒であったその青年は、高等学校を卒業して東京の大学へ行ってしまうと、もうそれきり手紙も寄越さず、居所も知らさ