雪の夜 / 織田作之助
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仕立下ろしを着るなど、少しはめかしこんで、自身出向いた。下味原町から電車に乗り、千日前で降りると、赤玉のムーラン・ルージュが見えた。あたり
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大晦日に雪が降った。朝から降り出して、大阪から船の著く頃にはしとしと牡丹雪だった。夜になってもやまなかった
うち四人は女だが、一人は裾が短く、たぶん大阪からの遠出で、客が連れて来たのであろう。客は河豚で温まり
という瞳を温泉へ連れて行った。十日経って大阪へ帰った。瞳を勝山通のアパートまで送って行き、アパートの入口でお
の娘やねん。女の方から言い出して、一緒に大阪の土地をはなれることになった。
。掛けては置くものだと、それをもって世間狭い大阪をあとに、ともあれ東京へ行く、その途中、熱海で瞳は妊娠している
になった。東京のけつねうどんは不味うてたべられへん、大阪のほんまのけつねうどんをたべさしたるねんと、坂田は言い、照枝も両親が
変な顔をした。たいていは学生で、なかには大阪から来ている者もいたのだが、彼等は、まいどおおけに
のかと、松本はふと口に出かかるほどだったが、大阪から連れて来た女の手前はばかった。坂田も無口だった。だから、
ものの、たいした話もなかった。それでも松本は、大阪は変ったぜ、地下鉄出来たん知ってるな。そんなら、赤玉のムーラン・
ず、喋っていた。そうでっか、わても一ぺん大阪へ帰りたいと思てまんねんと、坂田も話を合せていたが、一向
「君さっき大阪へ帰りたいと言うてたな。大阪で働くいう気いがあるのんやったら
「君さっき大阪へ帰りたいと言うてたな。大阪で働くいう気いがあるのんやったら、僕とこでなにしてもええ
駄々をこねて来たものの、三年経ったいまは大阪で死にたいと、無理を言う。自分のような男に、たとえ病気のからだ
ついて来てくれたと思えば、なんとかして大阪へ帰らせてやりたい。知った大阪の土地で易者は恥しいが、それも
なんとかして大阪へ帰らせてやりたい。知った大阪の土地で易者は恥しいが、それも照枝のためなら辛抱する、自分もまた
赤玉のムーラン・ルージュがなくなったと、きけば一層大阪がなつかしい。頼って来いといった松本の言葉を、ふっと無気力に想い出した
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柔くなったところで、三人は転業を考えだしている。阪神の踊子が工場へはいったと、新聞に写真入りである。私たちは何に
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当時は勤先の名で、瞳といっていた。道頓堀の赤玉にいた。随分通ったものである、というのも阿呆くさいほど
アへ行くいうたはりましたと、みなまできかず、道頓堀を急ぎ足に抜けて、松竹座へはいり、探した。二階にいた。
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だと、それをもって世間狭い大阪をあとに、ともあれ東京へ行く、その途中、熱海で瞳は妊娠していると打ち明けた。あんた
東京へ行った由噂にきいてはいたが、まさか別府で落ちぶれている
たいにも先ず旅費の工面からしてかからねばならぬ東京での暮しだったのだ……。
だった。湯気のにおいもなにか見知らぬ土地めいた。東京から何里と勘定も出来ぬほど永い旅で、疲れた照枝は口を
良いところだとはきいてはいたが夜逃げ同然にはるばる東京から流れて来れば、やはり裏通の暗さは身にしみるのだった。
熱海で二日、そして東京へ出たが、一通り見物もしてしまうと、もうなにもすることは
も利溌な子供らしく聴えて以来、お腹の子供はぜひ東京育ちにするのだと夢をえがき、銭勘定も目立ってけちくさくなった
をしていたから、随分乗気になった。照枝は東京の子供たちの歯切れの良い言葉がいかにも利溌な子供らしく聴えて以来、
と、きつねうどん専門のうどん屋を始めることになった。東京のけつねうどんは不味うてたべられへん、大阪のほんまのけつねうどんをたべさし
そして、同じやるなら、今まで東京になかった目新しい商売をやって儲けようと、きつねうどん専門のうどん屋を始める