雨 / 織田作之助

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地名一覧

大阪

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日本が勝ち、ロシヤが負けたという意味の唄が未だ大阪を風靡していたころである。その年、軽部は五円昇給され

金助は不慮の災難であっけなく死んでしまった。その日、大阪は十二月末というのに珍らしく初雪がちらちら舞っていた。豹一の

大阪の町々の路次には、どこから引っぱって来たのか、よく石地蔵が

芸者遊びになり、そしてハイカラ振ってその頃道頓堀に出来た大阪名物カフェ美人座にもしげ/\と通った。家で泊ることも少く、

買いに行くのだと船長に五円借りた。それを大阪への旅費にし、勿論バクチの借りは踏倒すつもりだった。焼け出された様

汽車の中では大阪につくと直ぐ家に戻るつもりであったが、しかし、駅に着いて、

心斎橋筋

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れた。前方に光が眩しく横に流れていて、心斎橋筋である。その光りの流れは、こちらへも又、向うの横丁へも流れ

千日前

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た金助が、お君に五十銭貰い、孫の手をひっぱって千日前の楽天地へ都築文男一派の新派連鎖劇を見に行ったその帰り、日本橋一丁目

出た。生国魂神社の裏を抜け、坂道を降りて千日前に出た。珍しく霧の深い夜で、盛り場の灯が空に赤く染まって

夜で、盛り場の灯が空に赤く染まっていた。千日前から法善寺境内にはいると、そこはまるで地面がずり落ちた様に薄暗く境内にある

。その夜、赤玉がカンバンになると、女と一緒に千日前の寿司捨で寿司をたべ、そして、五十銭で行けと交渉した車で

難波

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が、やがて、船に積んだらどこまで行きやる、木津や難波の橋の下、と哀調を帯びた子守唄を高らかに豹一にきかせた

讃岐国

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千日前楽天地の地下室で、八十二才の高齢で死んだという讃岐国某尼寺の尼僧のミイラが女性の特徴たる乳房ならびに性器の痕跡歴然たり、

生玉町

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持ちであったが、兄の商売の秘法を教えられ、生玉町に一戸を構えて、口金商を始めた。妻帯したが、安二郎は

大阪市

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森田から手紙が来たのを横取りした安二郎は消印が大阪市内だと知って、恐しく狼狽した。黙って居れば良いのに、手紙

生玉前町

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ろしおますと万事相手の言う通りになった。相手は生玉前町の電球口金商野瀬安二郎であった。

四国

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三七日の夜、親族会議がひらかれた席上、四国の高松から来た軽部の父が、お君の身の振り方に就て、

金醤油運搬用貨物船の火夫の口ならあるといわれ、四国の小豆島に渡った。成るにこと欠いて、火夫などになったのは、築港

小豆島

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腕を嗤っただけあって、船の仕事は辛かった。小豆島と高松を往復する一〇〇噸足らずのボロ汽船であったが、彼の石炭

道頓堀

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に昇格して芸者遊びになり、そしてハイカラ振ってその頃道頓堀に出来た大阪名物カフェ美人座にもしげ/\と通った。家で泊る

高松

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三七日の夜、親族会議がひらかれた席上、四国の高松から来た軽部の父が、お君の身の振り方に就て、お

ながら、「脱走」ときめた。二日経った夜、高松の港につくと豹一は船員たちと一緒に女を買いに行くの

嗤っただけあって、船の仕事は辛かった。小豆島と高松を往復する一〇〇噸足らずのボロ汽船であったが、彼の石炭の

京都

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の姿を見るに堪えなかったのである。三ヶ月の京都での生活中、彼は屡々応援団の者に撲られ、与太者と喧嘩し

暇をみて勉強し、十八の時専検にパスし、京都の三高の入学試験をうけると訳もなく合格した。見直したお兼

巴里

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からであったが、ある夜更け客を送って飛田遊廓の巴里楼まで行くと、運転手は、如何や一丁遊んで行こうか、こゝは飛田

如何なる心の矛盾からか豹一はその後、巴里楼にしげ/\と通った。随分苦面もして通うので

見ろと思ったが、しかし、そんな安二郎を見るにつけ、巴里楼の妓に嫉妬した自分の姿を想い知らされる豹一は、初めて

は何かの間違いじゃないか。好きやから仕方ないわ。巴里楼の妓に仕込まれた技巧が女を惚れさしたのだと豹一

の肢態の動きを想わせる軽薄なテンポに咄嗟に、巴里楼の広間で白いイヴニングをきて客と踊っていた妓の顔を

日本橋

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光栄に浴していた訳である。そして、校長と同じく日本橋五丁目の上るり本写本師、毛利金助に稽古本を注文していた。

ある日、軽部の同僚の蒲地某という男が突然日本橋五丁目に金助の家を訪れ、無口な金助を相手に四方山の話を喋り散らし

ある日、軽部が登校して行った留守中に、日本橋の家できいたのですがと若い男が訪ねて来た。まあ、

らしい口をきかなかった。お君が豹一を連れて日本橋五丁目の実家に帰ってみると、家の中はあきれるほど汚なかった。障子

へ都築文男一派の新派連鎖劇を見に行ったその帰り、日本橋一丁目の交叉点で恵美須町行の電車に敷かれたのである。金網

住吉

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は豹一的な限界がある。品子が借りていた住吉町の姫松アパートの一室で泊ることになり、乳房にまでコールドクリームの匂いを

東京

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で、どう考えても一調子高すぎると思われる下手な東京弁で大学生が口説くのを、腕組みしながらフン/\ときいている額