医師と旅行鞄の話 / スティーブンソンロバート・ルイス 佐藤緑葉
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倫敦
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た。ノーエル博士といふのがその人の名前だが、倫敦で開業してゐて、仕事もだん/\繁昌して來たのに、
が來たよ。あすの朝早く、ボヘミヤのフロリゼル殿下が倫敦へ歸られる事になつてゐる。巴里の謝肉祭を見て二三日娯しんでゐ
とつては、あの旅行鞄を誰にもあけられずに倫敦まで持つて行くといふ事が必要だよ。それには税關が徹底的に
好きだから。」と、醫者は答へた。「ところで倫敦へ着いたなら、」と、彼はつゞけて言つた。「君の仕事は
耽つてゐるが――若い時分には私の名は、倫敦でも最も拔目のない、そして危險な人物の間で、評判になつてゐ
引きとつて行く馬車に敬禮した。そしてその晩汽車で倫敦を立つて巴里へ歸つた。
巴里
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た。そして羅甸區の所謂家具附ホテルの七階から、巴里の人氣場所などをあれかこれかと調べて樂しみにしてゐ
て來たのか、私にはさつぱり分らない。まるでこの巴里には、學生達やお店者などの暴れ※つてゐるこんな處よりほか
弟の行爲を保護してやる義務があるよ。本人は巴里に幾日もだら/\してゐる事に同意したが、當人
そこで話は轉じて、謝肉祭の頃の巴里の舞踏場にありふれた話題に變つて行つた。
ボヘミヤのフロリゼル殿下が倫敦へ歸られる事になつてゐる。巴里の謝肉祭を見て二三日娯しんでゐられたのだがね。これは
て行つた。「それから君に勸めるが、今度巴里へ行つたら、あゝいふ危險な人物の仲間になる事は避けたがよい
馬車に敬禮した。そしてその晩汽車で倫敦を立つて巴里へ歸つた。