霜凍る宵 / 近松秋江
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され放題馬鹿になっていたが、こう見えても丹波や丹後の山の中から出て来た人間とは人が違うんだ」
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女主人は今から二十年ほど前まで祇園で薄雲太夫といって長い間全盛で鳴らしたもので、揚屋の送り迎えに八
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その男ももとは東京か横浜あたりの人間で絵の修行に京都に来る時一緒に東から連れて来た
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へ廻って行って、横町を歩いていると、向うの建仁寺の裏門のところを、母親が、こんな寒い朝早くからどこへ行ったのか
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放題馬鹿になっていたが、こう見えても丹波や丹後の山の中から出て来た人間とは人が違うんだ」私は
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はじめの時分男は二、三人の若い画家と一緒に知恩院の内のある寺院に間借りをして、そこで文展に出品する絵などを
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が調わない時には、かねて自分を引かそうとしている大阪の方の客にでも頼んでなりともぜひともここで身を引かね
わ。……そうそうあの時お園さん二、三日大阪へ行ってはりました。そして夜遅うなって帰って来やはりました。
、お園さんは大方そんなこととも知らはらんやろか大阪に往てどこで何しておいやすんやろいうて私うちで言うてい
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込みながらなすこともなく日を過していたが、もし京都の地にもう女がいないとすれば、去年の春以来帰らぬ東京
南山城の山の中に入って行こうとしたこと、また京都中を探し歩いたこと、そんな心労を数え立てていう段になったら幾らいって
いかに憎悪して呪ったであろう。出来ることなら、薄情な京都の人間の住んでいるこの土地を人ぐるみ焦土となるまで焼き尽してやり
なっても厭いはせぬとまで懐かしく思っていたその京都を、それ以来私はいかに憎悪して呪ったであろう。出来ることなら、
、自分の熱愛する女がそうせよというなら、もう一生京都に住んで京の土になっても厭いはせぬとまで懐かしく思って
であったり遠慮であったりした。そして、近づきのない京都三界に来て、そうしたわけでそんな家の厄介になったりするの
られないであろうと思うと、それが東京と遠く離れた京都の土地であるのが、せめてもの幸いであった。婆さんはむずかし
島もないような気がして、どっちを向いても京都の人間は揃いもそろってよくもこう薄情に出来ているものだ、いっそ
事実でもない。去年の春まだ私が東京にいて京都に来ない時分、もう何年にかわたるたびたびの送金の使途について
いられなくなり、いっそこの金を持って、これからすぐ京都へ往って、あの好きな柔和らしい顔を見て来ようかと思ったこと
深い男があるということを聞いたので、その後京都に往って女に逢った時、軽く、
はじめて彼女を知って一年ばかり経ってから女には、京都に土着の人間で三野村という絵師で深い男があるということを聞い
があった。それは以前から茶屋女であったらしく、京都に来ても京極辺の路次裏に軒を並べている、ある江戸料理屋
男ももとは東京か横浜あたりの人間で絵の修行に京都に来る時一緒に東から連れて来た女があった。それは以前
ところでいうてはった。……頼りない女や。私が京都にいるからこうしているようなものやけど、東京の方にでも
私はあんたもご承知のとおりあの年の夏の三カ月ばかり京都にいて東京に帰ったきり手紙と金とを送ってよこすだけで、
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もう女がいないとすれば、去年の春以来帰らぬ東京に一度帰ってみようかなどと思いながら、それもならず日を送るうち
もいいようにされている子供じゃないんだぞ。東京でもうさんざっぱら塩を嘗めて来ている私だ。今までここの女に焦れ
て我慢していられないであろうと思うと、それが東京と遠く離れた京都の土地であるのが、せめてもの幸いであった
申す者でございまして、生国はどこですが、もう長く東京に住んでおります」そういって初めて本名を語ると、婆さんはどこ
のあったのも知らずして、好い気で遠くの東京の空の果てにいながらただ一途にその商売人の女を思いつめていた
何となくもう春が近づいて来たようで、ことに東京と異って、京は冬でも風がなくって静かなせいか夜気の
も全く無根の事実でもない。去年の春まだ私が東京にいて京都に来ない時分、もう何年にかわたるたびたびの送金の
その男ももとは東京か横浜あたりの人間で絵の修行に京都に来る時一緒に東から連れ
が京都にいるからこうしているようなものやけど、東京の方にでも往ってしまえばそれきりやいうて、始終頼りない女や
も文展に入選したら娘をやってもよいとか、東京から伴れて来ている女と綺麗に手を切ってしまえば承諾すると
の終りから夏の半ばまで三月ばかりもいて私が東京に帰ってからも引きつづき絶えず手紙の往復をしているうち、秋に
ご承知のとおりあの年の夏の三カ月ばかり京都にいて東京に帰ったきり手紙と金とを送ってよこすだけで、てんで自分の体