金時山 城ヶ島 相模灘 箱根 駒ヶ岳 箱根町 富士山 葉山 足柄 東照宮 京都 東京

西北に進んで宮城野の村を深い霧の底に沈め、金時山から足柄峠、長尾峠に向つて長驅する。私は、いつもそれを蘆の

夕映てゐる碧空に向つて飄々として上騰し、金時山、足柄山の方へ進んでゆく、池尻の茶屋の老婆は

津々浦々が双眸に集つてくる。大山、足柄山、金時山の峯巒が遠近に從つて幾色にも濃淡を劃しながら秋の陽を

螺のごとく微に水に浮んで見えるのは三浦半島の城ヶ島である。

ゐて翌朝起きてみると陰晴定めない高い山の上は相模灘の方から朦々として湧き上つて來る白い水蒸氣に峯も溪も人家

箱根の山々

壓を加へるかのごとく映ずることがある。それに比べると箱根は、日光のごとき崇拜の感じには乏しいけれど、一層の安らかさを感ずる

心を落着け、病弱の體を休息せしめようとするには箱根の方が好ましい。

の夏の半ばから秋の始めへかけて二た月ばかり箱根にいつてゐた時分のことを今そゞろに想ひ起してゐる。その年

であつた。私はその八月の十日に立つて箱根にいつた。私がゆくと二三日して、がらりと天候が一變し

な恐怖の感に滿ちた山である。昔の所謂箱根八里の峠を越して往來をした旅人の眼にはきつと最も

このコッテージがなかつたならば、荒蓼として見えるべき箱根の風景が、寧ろそれあるがために自然の景致に一點の情味を

が利かない。然るに鷹巣山の背を歩いてゆくと、殆ど箱根山彙の全景を双眸に集めることができる。

蘆の湯のあるところは、すぐ浴舍の後に聳え立つ駒ヶ岳と双子山との峽になつてゐるので、蘆の湯から双子山の麓を

夕陽が駒ヶ岳の彼方に沈んでゆく頃の山々の美しさといふ者はない。駒ヶ岳は

沈んでゆく頃の山々の美しさといふ者はない。駒ヶ岳は灰白色の雲霧に隱れてしまつて、日頃の懷しい姿はどこにある

の一角を微に顯はすことがある。この時の駒ヶ岳は平常好晴の日に仰ぐ駒ヶ岳とは全く違つた非常な神祕なものゝ

ことがある。この時の駒ヶ岳は平常好晴の日に仰ぐ駒ヶ岳とは全く違つた非常な神祕なものゝのやうに思はれることがある

それに反して好く晴れた日の駒ヶ岳は清楚な感じがある。笛塚山または稍※遠く離れて鷹巣山あたりから

は蘆の湖の水が碧く湛へてゐる。が、駒ヶ岳は東に向いた方を小涌谷から登つて來る道から眺めたよりも、蘆

。そこの往還から見晴しの茶屋あたりまでのところから仰いだ駒ヶ岳は何ともいへない懷しい姿である。私はそこの駒ヶ岳を最も好む

何ともいへない懷しい姿である。私はそこの駒ヶ岳を最も好む。駒ヶ岳の、さうであるのに反して、その邊から眺めた

懷しい姿である。私はそこの駒ヶ岳を最も好む。駒ヶ岳の、さうであるのに反して、その邊から眺めた双子山の南に面し

宮の下から大地獄の方を巡つて湖尻から舟に乘り駒ヶ岳を仰ぎながら箱根町に着いたことがあつたが、それはもう今から十

た。夏の頃とちがつた湖のうへは遠く澄み、駒ヶ岳の裾を吹き下して來る風はもう冷いほど強く肌に沁みた。塔ヶ島

水の色も先達て中とはちがつてひどく秋寂びてゐる駒ヶ岳の裾はそのあたりの湖の上から眺めるのが最もいゝ。その長く引いた

て異る奇趣妙景について名を選するならば駒ヶ岳は前にいつたやうに夏の姿をもつて最も優れりとする。双子山

そして駒ヶ岳の晴天に仰ぐべき山であるに反し、蘆の湯方面より見た聖ヶ

中を降りてゆかず、明神ヶ岳の麓から朝に夕に駒ヶ岳や早雲山にかゝる雲を眺めて暮らす彼女等にとつては、わづか一里に

日を控えてゐるので何となく戸外はざわめいて、駒ヶ岳や双子山にかゝつてゐる水蒸氣は疾風の如く飛んでゐるけれど、

綺麗に覺まされる。その頃であつた。私は駒ヶ岳に登つて見た。駒ヶ岳は前いつたごとく優しい、婦女子でも踏破する

その頃であつた。私は駒ヶ岳に登つて見た。駒ヶ岳は前いつたごとく優しい、婦女子でも踏破することのできる山上公園中の

ある。十五六の小娘などが二三人で四千六百尺の駒ヶ岳や四千七百尺の神山などへ午前に登つて來て、十分自分の健康を滿

を散歩してゐると、眞青な白茅に蔽はれた駒ヶ岳の背を九十九折りの山徑を傳うて登つてゆく人の姿が

來たならば、少女でさへあゝして登つてゐる駒ヶ岳の頂を一度は是非とも踏んで見たいものである。蘆の湯五十

山道は殆ど殘る隈なく歩いてみた。たゞ一つ殘るは駒ヶ岳である。

ゐる。天地渾然として瑠璃玉の如く輝いてゐる。駒ヶ岳にも今日は風に吹き拂はれてか、めづらしく雲霧がかかつてゐ

「今日これから駒ヶ岳に登らうと思ふんですが、すこし風があるやうですが、どんなもので

「お秋さん、先刻駒ヶ岳に上らうとおもつて相談したら、風があるので止めた方が

の裾をめぐつて長いリボンを展べたやうに遠く、駒ヶ岳の尾を引いてゐる彼方の高原の果にいつて沒してゐる。尚ほ

舊街道に沿うた湖畔の八町の杉並木を通り越し、箱根町のところから振顧つて眺めた双子山の形も亦た印象深い容をし

の享樂は限りがないが、私は去年の秋一度箱根町から塔ヶ島の離宮の傍をめぐつて元箱根まで僅かの距離を舟に乘

の方を巡つて湖尻から舟に乘り駒ヶ岳を仰ぎながら箱根町に着いたことがあつたが、それはもう今から十二三年も昔

の八町の杉並木を通り拔けて舊關所の趾から箱根町の方へといつた。そこらからが双子山の突兀とした容を

した容を仰ぐに最もいゝ。私は双子山を眺めながら箱根町を歩いてみた。

曳いてゐる方面が最も雄偉の感じを與へる。それと箱根町の湖畔からやゝ遠く距離を置いて仰いだローマンチックな姿である。新道

せて白鳥の如く動いてゐる。塔ヶ島の離宮、箱根町の人家、例の美しい八町の杉並木は沈んだやうな暗緑色を刷いて

、優しい山である。そこに登ると展望は更に大きい。富士山は手に取るやうにすぐ西北の空に聳つてゐる。眼の下には

よく見えて、いゝ景色でございますよ。昨日の朝は富士山がよく見えました。あんなに富士山のよく見えることはめづらしいつて番頭さん

よ。昨日の朝は富士山がよく見えました。あんなに富士山のよく見えることはめづらしいつて番頭さんがさういつてゐました。それ

ゐる。小田原、國府津、大磯、それから江の島から逗子、葉山、三浦半島にまでつゞく津々浦々が双眸に集つてくる。大山、足柄山

岳、明神ヶ岳の上に尚ほ遠く高く見えてゐるのは足柄、愛甲諸郡につゞく北相模の山々である。ヘルメット形の大山も見える。好く晴れ

の美しさを未だ嘗て見たことがなかつた。日光の東照宮山内の杉の色の美しさも忘れることが出來ぬのであるが、しかし

（大正七年六月卅日京都安井の寓にて）

日ごろまで息をも次がさぬほどの炎暑で、東京などでは屋敷の隅に生えた桃の若木のやうな草木などはあまり

も、それが何處までゞも深くふかく考へることが出來る。東京にゐたならば僅かに四町か五町の道を歩いても脚

て胸を搾る如に懷しがるのも無理はない。東京や横濱さへも知らず、中には小田原あたりさへ、生れて一度か二

よりも一層心の落着くところであつた。長い夏の間東京にゐて極度に疲勞してゐた私の神經衰弱もそこにゐる

で、私は廣い庭を隔つた遠くの離家に、東京の某中等學校の校長なる老紳士と室を隣して起臥してゐ

大抵の浴客は、家族を連れた多勢の客でも、東京や横濱の繁華な都會から來てゐては三十日もゐると山