黒髪 / 近松秋江

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地名一覧

吉野

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私の眼や肉体を一層懊悩せしめた。奈良からも吉野からも到るところから絵葉書などを書いて送っておいた。女から何とか

比叡

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まともに受けて淡蒼い朝靄の中に霞んで見える比良、比叡の山々が湖西に空に連らなっているのも、もう身は京都に

宇治

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を占めて、母親は次の間の自分の長火鉢のところから新しい宇治を煎れてきたり、女は菓子箱から菓子をとってすすめたりしながらしばらく

高台寺

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といい置いて、出て行った。そこらは、もう高台寺の境内に近いところで、蓊欝とした松の木山がすぐ眉に迫り、

畿内

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年めの夏であった。夏中を、京都に近い畿内のある山の上に過した。高い山の上では老杉の頂から白い

音羽山

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眺めわたすと、東山は白い靄に包まれて清水の塔が音羽山の中腹に夢のようにぼんやりと浮んで見える。遠くの愛宕から西山の一帯

愛宕

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の中腹に夢のようにぼんやりと浮んで見える。遠くの愛宕から西山の一帯は朝暾を浴びて淡い藍色に染めなされている。私

、麗らかに照る午さがりの冬の日を真正面に浴びた愛宕の山が金色に輝く大気の彼方にさながら藍霞のように遠く西の空

下河原

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れていった。そして静かな冬の日のさしかけている下河原の街を歩いて、数年前一度知っている心あたりの旅館を訪うと、

「あんたはんがようおいでやす下河原の家へこれからいて待っとくれやす。そしたら私あとからいきます

それから私はまた、いつかの下河原の家へ行って待っていた。それは日の永い五月の末の

三条

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、そんな種類の女の住んでいる祇園町に近いところで、三条の木屋町でなければ下河原といわれて、祇園町の女の出場所になって

建仁寺

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から出るとすぐ居合わす俥に乗って、川を東に渡り建仁寺の笹藪の蔭の土塀について裏門のところを曲って、だんだん上りの道

ていった。そしてしばらく行ってから母親は、とある横町を建仁寺の裏門の方へ折れ曲りながら、

大阪

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なかった。そして九月の下旬に山を下りて紀伊から大阪の方の旅に二、三日を費やして、侘しい秋雨模様の、ある日

女はいいあんばいに家にいるだろうか。此間中から大阪などへ行っていて留守ではなかろうか。大阪には一人深くあの女を

中から大阪などへ行っていて留守ではなかろうか。大阪には一人深くあの女を思っている男があるのだ。……自分が

京都

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ゆかぬ、そのうちこちらから何とか挨拶をするまで、京都へは来ないで、すぐ東京の方へ帰っておってもらいたいという

てきた。夏の初め、山に行くまで、東京から京都に来ると、私は一カ月あまりその女の家にいたのであっ

、もう四年めの夏であった。夏中を、京都に近い畿内のある山の上に過した。高い山の上では老杉

で、私は懐かしさに躍る胸を抱きながら、その晩方京都に着くと、荷物はステーションに一時あずけにしておき、まず心当りの落着き

費やして、侘しい秋雨模様の、ある日の夕ぐれに、懐かしい京都の街に入ってきた。夏の初め、山の方に立ってゆく

は東山の麓に近い高みになっていて、閑雅な京都の中でも取り分けて閑寂なので人に悦ばれるところであった。

湖西に空に連らなっているのも、もう身は京都に近づいていることが思われて、ひとりでに胸は躍ってくるのであっ

戯談を。そちらこそ違えちゃいけないよ。私はねえ、京都の地にいる人と違うんだよ。ゆうべ夜汽車で、わざわざ百何十

時間をちがえぬように急いでそこを出ていった。京都の冬の日の閑寂さといったらない。私はめずらしく、少しの酒

ながら、何となく古風の女めいて、どうしても京都でなければ見られない女であると思いながら、私は寝床の上に

た。とうとうまた、ようやく一年半ぶりに女に逢うべく京都の地に来ていながら、私はただ、あたりまえの習慣に従って女

そして一と月近く大和の方の小旅行をして再び京都に戻って来た時にはもう古都の自然もすっかり初夏になってい

に取って並べられる料理の数々。それは今の季節の京都に必ずなくてはならぬ鰉の焼いたの、鮒の子膾、明石

あったのであるが、二、三十年前に父親が京都へ移ってきた。故郷の山の中には田畑や山林などを相当

せた。その話によると、彼女の家はもと同じ京都でも府下の南山城の大河原に近い鷲峯山下の山の中にあった

その後夏の終りごろまでも京都の地にいる間たまに母親のところへも訪ねていってそのたびごと女

奈良

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、思い疲れた私の眼や肉体を一層懊悩せしめた。奈良からも吉野からも到るところから絵葉書などを書いて送っておいた。女

東京

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とか挨拶をするまで、京都へは来ないで、すぐ東京の方へ帰っておってもらいたいというのであった。

懐かしくなってきた。夏の初め、山に行くまで、東京から京都に来ると、私は一カ月あまりその女の家にいたの

けれども私は、どうしてもそのまますぐ東京へ帰ってゆく気にはなれなかった。そして九月の下旬に山を

のであった。そして、幾ら遠く離れていても、東京にじっとしていれば、諦めて落ち着いているはずの、いろいろの思いが

その前の年の冬に東京から久しぶりに女に逢いにいった時にも、やはりその家へ泊った

、こうして、自分は汽車に一夜を明かして、はるばる東京から逢いに来たのである。女はどこへ、どんな人間の座敷に

は、その晩遅い汽車で、女に京都駅まで見送られて東京に戻って来た。それから一年ばかり、手紙だけは始終贈答して