琉球 本郷 福岡 駒込

天願氏は琉球の生れで、矢張り帝大を出た癖に毎日ぶらぶら遊んでいる。三十を越し

いるが、生活費はどこから入るのか判らない。昔、琉球にある王様がいたが、ある日他の島に遊びに行って、その

本郷の大学前の電車通りを、轟々と音立てて電車が通った。葉の

七時頃になってそこを出た。本郷の通りには夜店が出ていて、男や女が明るい顔してぞろぞろ

吹きつけた。ざらざらと音がした。外は暗くて、本郷の家々は電灯を消して寝ている。月の光が瓦に射し、瓦

侘びしい露地の明るさの果て、本郷の家並が曲りくねって連なり、戸毎に日章旗がひらひらとはためいている。祝祭日な

この男に良く似た顔を私は小学生の時分に、福岡の水族館で見たことがある。女中が下司な調子でそれを冷かした

低く連なった家並の上にあかあかと落日がかかる駒込蓬莱町の坂道を、私はうなだれてあても無く登って行った。