三等郵便局 / 尾崎士郎
地名一覧
湯灌
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翌朝は曇っていたが、湯灌が済み、読経が済み、そして型どおりに兄の葬列が火葬場に向って町を
岡崎
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誰れからともなく伝わってきた。彼女がある男と岡崎の町に逃げ落ちてそこの小さい宿屋で女中奉公をしていること、やがて、
その頃、わたしは中学に通うために岡崎の町に下宿していたので、ときどき帰省するときのほかは郷里の
名古屋
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していること、しかし、間もなく新しい男が出来て名古屋のある場末の街に小さい菓子店を開いていること――その噂の一
たというだけで父も母も生きていたし、名古屋の通信官吏養成所を卒業して帰って来た兄は、三等郵便局と
低い声であったが、わたしはほとんど直覚的に彼が名古屋の管理局から派遣された視察員にちがいないことを感じた。
東京
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。中学を卒業したわたしはその日の夜の汽車で東京へゆく筈であった。風の強い日であった。堤防へ続く一筋
の辞令が下ったんだ。葬式が済んだらすぐお前は東京へ帰れ」
いるのだ。わたしの心は無意識のうちに、わたしの東京の生活について何事も感づいていない彼に対してかすかな軽蔑を
その翌日、父の葬式を済ますとすぐにわたしは東京に立った。
その冬の休暇は慌しく過ぎていった。わたしが東京へ帰るとき、風の寒い夜であったが母と兄と嫂とが
それから数日の後、わたしたちは新しい運命を開くために東京へ出てきた。あの善良な執達吏の老人が残して置いてくれた