銀座 東京 東中野

新庄は或る時若い坊ちやん／＼した学生と、銀座を歩いてゐる彼女を見た。二タ月も二人は逢はなかつた。彼

飾つて、少し年取つた背広服の男と、やつぱり銀座を歩いてゐた。媚を送る彼女の目をちらと見たが、

やると、活動のプログラムか何かをポケツトにして、銀座で友人にランチでも奢つて直き又猫のやうに、のそ／＼

の愛に惹込まれて行つた。井沢が喧嘩して東京へ帰ると、きつとお葉が後から出かけて行つたが、家の

入浸つてゐた。喧嘩でもしなければ、滅多に東京へは帰らなかつた。卒業間際の学校を放抛つてしまうほど、この

井沢は東京に家があつたけれど、いつもお葉の家に入浸つてゐた。

「その人が久振りでやつて来ましたの、今朝東京から。安い地所の売りものがあるから、それなら四五年持つてれば少なくとも

んもの。そしたらこれを売つて、そのお金で東中野あたりへ引込んで、お茶でも立てゝ、暢気に暮さうとおもふの