芝浦 東京 大宮

は、地震がさほど苦にもならなかつたけれど、一度芝浦のロセツタホテルへ出て仕事をしてゐたとき、今にも大きな梁がはづれ

あつた。しかし彼女の生活もさう楽ではなかつた。東京では二人で酸苦を嘗めた。そしてそれが竹内が世のなかへ

孤独な井村のお婆さんは、長いあひだ東京で貧しい間借り生活をしてゐて、寂しいをり／＼には、時々私

地方にゐる竹内とは別々に、東京で佗しくつゞまやかに暮してゐる彼女は、もう七十を三つも

この秋には彼女も長く住みなれた東京を引揚げて、田舎へ帰らうとしてゐたほど、死に近づきつゝある

を早めたに過ぎないのであつた。彼女は半夜を大宮で、野天で明かした。そして死物狂ひになつて、しかし老人の特権