銚子 大阪 倉敷 両国 千葉 東京 浅草 日本橋 浦賀

のために見つくろつて、酒を白銚から少しばかり銚子に移して、銅壺でお燗をしたりした。水桶だのお鉢だ

骨肉であり親愛者である弟も、人づかひの劇しい大阪の方で、※弱い体で自転車などに乗つて苦使はれてゐ

の方の産れで、可也な締りやであつたから、倉敷を出して質屋へあづけてある衣類なども少くなかつたし、今少し稼ぎ

に其事を話して、廓を脱け出ると土産物を少し調へて、両国から汽車に乗つた。近頃彼女は、内所の上さんや新造と一緒に――時として

ゐて、東京の地理もほゞ知つてゐたし、千葉や成田がどの方面にあるかくらゐの智識はもつてゐた。彼の

彼の家は農家ではあつたが、千葉の方から養子に来た父は、元が商人出であつたから、

、それは何うやら能く自分のところに通つてくる、千葉在だと云ふお爺らしく思はれて来た。

、縁日の植木などをもつて来て、勝手の方で東京の職人らしい感傷的な気分で話した一売笑婦の身の上である。

ありませんね。親元へ帰つて行く人もあるし、東京でお客と一緒になる人もあるしさ。」

。一人は日本橋の木綿問屋の旦那だし、一人は時々東京へ出てくる田舎のお金持だけれど、どつちもお爺いさんよ。

時としては一人で、時々外出してゐて、東京の地理もほゞ知つてゐたし、千葉や成田がどの方面にある

ちよい／＼色々なことに手を出してゐた。東京へも用達しに始終往復してゐて、さう云ふ時の足溜りに、

「妹は東京へ行つてゐて、今家にはゐないんだ。」彼は気の毒さう

し、五十ばかりの母親にも紹介された。母は東京で世話になる人だといつて、彼が誇張して話したとみえ

、こんな処には迚も一生暮せさうもなかつた。彼は東京で暮すのだと言つてゐたが、他の男の子がないところから見る

に上つて来たのであつたが、三人とも浅草で飲んで来たとかいつて、いくらか酒の気を帯びてゐ

、無造作に紙にくるんで持つて来た。それに浅草で買つた切山椒などがあつた。

「さうね。一人は日本橋の木綿問屋の旦那だし、一人は時々東京へ出てくる田舎のお

「いや、いづれ明朝僕が紹介しよう。それに親父は浦賀の方の親類へ行つてゐるんだ。多分二三日は帰らないだらう