芽生 / 宮本百合子

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地名一覧

北海道

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は江戸っ子と椋鳥とごっちゃになって九州のはての人と北海道の人とごっちゃになってしまったので東京にすんで居る人でも、

根津

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根津の神社のわきの坂は、青っくさいようなモルヒネのような香がする。

根津のところから西片町にぬける奥井さんの細い通り露路はおばあさんのあたまのあぶら

小石川

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小石川の宮下町の近所は古い錦の布の虫ばんだ様な香がする。

ローマ

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自我の享楽のためにローマの古いいくたの歴史の生れた市を火にしてその□に薪木からのぼる

東山

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人は雲助を思い、まのぬけて大きい人を見ると東山の馬鹿むこを、そぐわないけばけばしいなりの人を見ると浅草の活動のかんばんを

九州

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であるけれ共、この頃は江戸っ子と椋鳥とごっちゃになって九州のはての人と北海道の人とごっちゃになってしまったので東京にすん

染井の墓地

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染井の墓地に行くまでの通りの、孔雀石をといてぬった青のような気が

京都

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京の舞子かなんかの話しでしょう、そいでなくってもキット京都にかかりあいがあるに違いないネ? そうでしょう?」

浅草

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浅草に行って

っこい段々になって居るって云う事も案内女のいかにも浅草式な赤いかなきんの妙てこなものを着て白粉をコテコテぬって歩くの

こんな事のあるのも浅草だから――私はあきらめた様にこんな事を思って居ました。

三年振りで行って見た浅草の町の空気の中から私はいろんな今までとまるで違った感じを得た

私のほしいと思って居た浅草提灯はなく、三年前頃までのあすこの空気とまるで違った、前

銀座の町のすきな私は、浅草の町に行ったと云う事が恋人の外の男としたしくしたの

を思いきりあらわしていっぱいはってある。すすけた天井からは、浅草提灯が二つ、新橋何とかとそめぬいた水色の手拭までさげてぶらさがっ

も同じなんで「人馬鹿にしてる」こんな事を浅草提灯に云ってムックリと起上った。机の前に座ったがどうも気

こんな事を思った。まだ買って来て半年もたたない浅草提灯のひだのかん定を始めたが、どうしても中途まで来ると

来ないんでいやな気持になったからプイと出て浅草の仲店に行って見る気になって電車にのる。沢山のって来る女

浅草が豚の油でといた紅のような気のするのと、

東山の馬鹿むこを、そぐわないけばけばしいなりの人を見ると浅草の活動のかんばんを思い出す。

銀座

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男としたしくしたのを女が悔いる様に私はよけい銀座の町にはげしいなつかしみをもってる様になったんでした。

銀座の町のすきな私は、浅草の町に行ったと云う事が恋人

銀座の竹葉のわきの通りは、だいだいのような香がする。そして混血児を

新橋

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てある。すすけた天井からは、浅草提灯が二つ、新橋何とかとそめぬいた水色の手拭までさげてぶらさがって二つある。柱

、場所から――御丁寧に道順まできいたんです。新橋のネ、橋の一寸わきの芸者なんですよ、マア、その晩

か、マア、斯うなんですよ、私がネ、こないだ新橋に行った時、ステーションにですよ、その時あの玄関に二人女が立っ

っけネエ、あの日に絹から筆から硯まで抱えて、新橋くんだりまで絹をぬらすまいぬらすまいとして出かけてその家に行ったら…

のを見ると、若い時の事がフッと思われる。新橋の何とかと云う妓だったってきいた事があるが、今の

浜町

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てうっとりとして居た。何にもする事もなし、浜町にでも行って焼絵を書いてでも来ようか、と思い立ったんで

向島

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玩具の達磨と鳩ぽっぽとをふり分に袂に入れて向島の百花園に行って見る。割合にスケッチも出来なくってイラついて来た

東京

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東京に沢山ある町のその一条毎にその特有のにおいが有る。それも気

の人と北海道の人とごっちゃになってしまったので東京にすんで居る人でも、随分ごっちまぜになって居る。毎日

巣鴨

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巣鴨ステーションの近所はもちのこげたような香がする。そいであすこいらの

京橋

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「あの私がよく行く京橋の家に三階から『テッテケテ』なんかってうたいながら、二階の私の

京橋のわきの岸が刺青のような色をして居るようなことだけは

と心細く、キリリシャンとした角帯がなつかしい気になるが、京橋辺で思いがけない江戸っ子の女になんかあうとめっぽう心太くなってしまう。