漁師の娘 / 徳冨蘆花
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膝をはめて、胡坐をかきながら、パイプを軽くつまんでマニラを吹いて居る。うっかり見とれて居ると、其の殿様がふっと此方を向いた
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ふく頃となれば、それ「雪は申さず先ず紫の筑波山」霞ゆえに遠くなって名詮自称霞が浦は一面春霞だ。其の間に此処
何か始終思い沈んで居る。それを聊か慰むるは歌と筑波山だ。お光は言わぬさきに先ず歌ったと云っても宜い位だ。何を
腰かけて、遥に筑波の方を眺めながら歌うのだ。筑波山は幼い時からお光の友であった。其の筈だ、朝起きて顔
、おはよう」といわんばかりに此方を向いて居るのは筑波山だ。夕方飯をしまってまた柳の古株に来て眺めると、とんと「お
浸し、見ゆる限りの陸影皆小く沈んで、唯遥に筑波山の月影に青く見えるばかりだ。更に南の方を見ると、北利根、横利根
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の※から水鳥が二羽三羽すうと金色の空を筑波の方へ飛んで、高浜麻生潮来の方角が一帯に薄紫になって、十六
、舞う真似をする。水鳥の蘆辺を立って、遥に筑波の方に飛んで行くを見送っては、半時も一時間も、見えなくなっ
て居る間を横一文字に遥に限って居るのが筑波の連山だ。家の前には水の中に杭打って板をわたし、
居る。何処へ往っても、眼をあげさえすれば、筑波は始終此方を向いて居る。時々は蘆のかげに「居ない居ない」
また久しぶりに柳の根株に腰をかけた。そして久しぶりに筑波の方を眺めた。すると筑波は「久しゅう逢わなんだねえ光ちゃん。何様
歌う。歌うと泣く、泣くと直ぐ柳の根株に行って筑波を眺める。ややしばし眺める。筑波は常にお光の心を慰めた。
柳の根株に行って、小声に歌いながら、天外遥に筑波の双峯を眺めて思いに沈む。
て、いつもお光が腰かけた柳の根株にしめなわかけて筑波さまあらぶる神さまに願をかけても、一向に帰って来ぬ。帰っ
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までお伴して来う」と母が云った。此れは東京あたりの猟組で、後の山を越えて来たので、渡を
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云う家はずらり西側に並んで、向う岸との間は先ず隅田川位、おおいと呼べば応と答えて渡守が舟を出す位だが、