勲章を貰う話 / 菊池寛

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ワルシャワ

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ワルシャワから、コヴノ要塞にかけての戦場で、有名を轟かした士官候補生イワノウィッチの負傷

を志願して、士官候補生に採用されたイワノウィッチが、ワルシャワに到着したのは一九一五年の夏の初めであった。

もう、その頃は、ワルシャワを去る五十マイルぐらいのところで、露独の重砲が、すさまじい格闘を続けて

、露独の重砲が、すさまじい格闘を続けていた。ワルシャワの街の大きい建物のガラス窓が、砲弾の響きで気味悪く震えることなどが

が、ワルシャワの市街は、どんなであったろう! イワノウィッチは、最初ワルシャワを、煤煙と埃

ワルシャワの市街は、どんなであったろう! イワノウィッチは、最初ワルシャワを、煤煙と埃と軍隊との街だと思っていた。ところが、

イワノウィッチが編入された、ワルシャワの守備の連隊が駐屯していたワジェンキ王宮の近所には、パガテラという

日も経たぬ頃には、彼は彼女と一緒に、ワルシャワの街の夜ふけに、馬車を走らせている自分を見出したのである。

七月が、だんだん終りに近づいた。ワルシャワの市街を照す日光は、日に日に熱度を加えてきた。それ

日に日に熱度を加えてきた。それと同時にワルシャワを半円に取り巻いている独軍の戦線が、時々刻々縮まっていった。

れて、大きいストーブのようになっていた。そして、ワルシャワ名物の蝿が、天井にも、床にも、壁にも、いっぱいに止まっ

泉水には冷たい微風が吹き起った。月の光が、ワルシャワの街を青い潮水の水底にあるように思わせた。その中を霧が

そうこうするうちに、七月は進んだ。ワルシャワの左翼を擁護しているルブリンの要塞が危険だという報道が伝わった。

危険だという報道が伝わった。さすがに、その頃からワルシャワの街には、負傷兵がみち溢れた。負傷兵を載せた無蓋の馬車が、ワルシャワ

、負傷兵がみち溢れた。負傷兵を載せた無蓋の馬車が、ワルシャワの大通りに続いていた。その中でも、毒ガスにやられた病

の空高く、黒い十字を描いた翼を閃しながら、ワルシャワの街の上を飛び回ることがあった。が、ワルシャワの貴婦人たちはパラソルを

、ワルシャワの街の上を飛び回ることがあった。が、ワルシャワの貴婦人たちはパラソルを傾げながら、また平然と空を仰ぎ見た。夜は芝居

陥ちたという報道が来た。ドイツの飛行機タウベが、ワルシャワの上空を見舞う日が多くなった。そのうちの一機が、夏の日

、夏の日に、輝いて流れるヴィスワ川の上空から、ワルシャワの街の上を低く飛翔しながら多数の紙片を撒いた。その紙片には

「木曜日にワルシャワ陥つべし」と書いてあった。何週の木曜日だか、正確な時日

だか、正確な時日はわからなかったが、それが、ワルシャワの市街を、ほのかに運命づけたようにみえた。ワルシャワの市民は、この

ワルシャワの市街を、ほのかに運命づけたようにみえた。ワルシャワの市民は、この紙片を見て笑った。が、それは、嘲笑でも

ポーランド人が多いワルシャワの市民は、戦いについて、こんなことをいっていた。

兵を、遠く駆逐してくれればいい。そして彼らがワルシャワから、遠く離れてくれればいい」この彼らのうちは、独兵も露

主権に服従していた人々には、今度、独軍がワルシャワを占領するということは、借家人が、いつの間にか、自分の家

ワルシャワの衛戍隊であったイワノウィッチの連隊も、戦場へ送られる日を待ってい

にとうとう出動命令が下った。翌四日をもって、ワルシャワを撤退し、野戦軍と合すべく、ジラルドゥフ停車場方面の戦線へ進出せよという

を告げようと思っていた。撤退の準備として、ワルシャワの工場は、もうたいてい火を掛けられていた。それと独機の爆弾の

それと独機の爆弾のために起っている火事とで、ワルシャワの街は煌々と明るかった。イワノウィッチは、中隊長の目を盗んで、秘かに

が、その晩もワルシャワの市民の大部分は、まだ落着いていた。芝居も活動小屋も興行を続け

た。芝居も活動小屋も興行を続けていた。今ワルシャワを占領している者も、彼らには他人であった。二、三

彼らには他人であった。二、三日後にワルシャワを占領する者も、また彼らには他人であった。

「モスクワ! ペトログラード! 私の故郷は、ワルシャワのほかには、どこにもない」と答えると、彼女は急に深い感傷的

らしいことであった。もう独軍の重砲弾が、盛んにワルシャワの外郭を見舞っている。自分は、夜が明ければ、この鏖殺的な砲弾

なかった。彼らが去れば、すぐ独軍の将校たちがワルシャワの歌妓たちの歓待を受けるのだ。お前は、独軍の将校たちの手の

たのだ。誰にでもすぐ自分を許す女は、ワルシャワへ入る最初の独軍の将校の持物になるだろう。この女は、独軍がワルシャワ

独軍の将校の持物になるだろう。この女は、独軍がワルシャワを占領しても、やはりアルトを歌っているのだ。そして、多くの独軍

八月五日の夜に、ワルシャワは陥ちた。イワノウィッチの属していた第五十五師団の第二連隊も、ワルシャワ

イワノウィッチの属していた第五十五師団の第二連隊も、ワルシャワを撤退して、ヴィスワ川の右岸の戦線に就いたのであった。

ワルシャワからコヴノに退却するまでに起った露軍の奇跡は、勇士イワノウィッチの五つの