九段 丸の内 江戸 富士見町 九州 畿内 陸奥国 越後国 伊勢 京極 蒲原郡 永平寺 松江 金沢 仙台 京都

の興を妨げぬ心遣いからであろう。日が暮れると、九段富士見町の縁類へ、年始のためだといって、出かけて行った。

ていた。それは、ほとんど消えかかっているけれども、丸の内に二つの鎌が並んでいるという珍しい紋だった。

来なければ討てるものではないと考えた。彼は、江戸に腰を落ち着けて、二年ばかりゆっくりと市中を尋ね歩いた。が、敵

さえきくことができなかった。彼はまた焦りはじめた。江戸を立って久しぶりに東海道を上ったのが、元禄三年の秋で、故郷

からの三年間にも、彼は敵に巡り合わなかった。江戸を出るときに用意した百両に近い大金も、彼が赤間ヶ関の旅宿で

新しい感激で、大和から伊勢へ出て、伊勢から東山道を江戸へ下った。が、敵らしいものの影をさえ見なかった。尋ねあぐんだ

下ってみた。が、それも徒労の旅だった。江戸へ引っ返すと、碓氷峠を越えて信濃を経て、北陸路に出て、

行けば、数多い紋所であるかもわからない。実際、江戸の町住居をしたとき、通りがかりの若衆が同じ定紋を付けているのを

江戸牛込二十騎町の旗本鳥居孫太夫の家では、お正月の吉例として

として、宝暦年間の江戸市中に轟き渡った。江戸の市民は、まだ二十になるかならぬかのかよわい少女の悲壮な振舞いを賛嘆

いうのであった。貞節悲壮な母子に対する賞賛は、江戸の隅々にまで伝わった。

を妨げぬ心遣いからであろう。日が暮れると、九段富士見町の縁類へ、年始のためだといって、出かけて行った。

彼は三十の年を迎えていた。畿内から中国、九州と探し歩いたそれからの三年間にも、彼は敵に巡り合わなかった。江戸

八年目、彼は三十の年を迎えていた。畿内から中国、九州と探し歩いたそれからの三年間にも、彼は敵に巡り合わ

対する憎悪を自分で奮い起しながら、またまた二年に近い間、畿内の諸国を探し回った。

、日本国中を探し回った。幸太郎が安政四年に、陸奥国牡鹿郡折の浜の小庵に、剃髪して黙昭と名乗って隠れて忍んで

越後国蒲原郡新発田の城主、溝口伯耆守の家来、鈴木忠次郎、忠三郎の兄弟は、

、彼を悲しませた。彼は新しい感激で、大和から伊勢へ出て、伊勢から東山道を江戸へ下った。が、敵らしいものの影

本当に、讃州丸亀の京極の藩中でお膳番を勤めたのは、彼の旧主の鈴木源太夫である。

越後国蒲原郡新発田の城主、溝口伯耆守の家来、鈴木忠次郎、忠三郎の兄弟は、敵討の

役僧の一人が、永平寺を逐電したのは、その翌日である。

を上ったのが、元禄三年の秋で、故郷の松江を出てから八年目、彼は三十の年を迎えていた。

に、二つない紋所とは限っていない。故郷の松江でこそ珍しい紋所でも、他国へ行けば、数多い紋所であるかも

「余の儀でない。貴僧はもと雲州松江の藩中にて、鳥飼八太夫とは申されなかったか」

「しからば重ねて尋ね申す。貴僧は松江におわした時、同家の山村武兵衛を打った覚えがござろうな」

、今申した通りの者じゃ。御自分の父を打って松江表を立ち退き、その後諸国にて身上を稼ぎ申したが、人を殺した

峠を越えて信濃を経て、北陸路に出て、金沢百万石の城下にも足を止めてみた。が、その旅も空しい

た。尋ねあぐんだ彼は、しようことなしに奥州路を仙台まで下ってみた。が、それも徒労の旅だった。江戸へ引っ返す

慰めて、郷里の新発田へ帰って来た。弟は、京都を立つ前、ひそかに所司代へ願い出て、敵直之進が、横死した旨